疑問

FX(外国為替証拠金取引)の所得というと、分離課税の雑所得が基本ですよね(参照元:国税庁 タックスアンサー「先物取引に係る雑所得等の課税の特例」)。

しかし、FX専業トレーダーとして日々FX取引を頑張っている人の中には、「雑所得ではなく事業所得として確定申告をする事は出来ないの?」と疑問に思う方もいるでしょう。

そこで、この記事では「FX専業トレーダーであれば、利益を事業所得として申告出来るのか?」という疑問に答えていきます。

スポンサーリンク

事業所得とは?雑所得との違いは?

事業所得とはそもそも何なのでしょうか?

自営業の人たち

まず、所得には以下の10種類が有ります(所得税法27条〜35条)。

  • ①利子所得
  • ②配当所得
  • ③不動産所得
  • ④事業所得
  • ⑤給与所得
  • ⑥退職所得
  • ⑦山林所得
  • ⑧譲渡所得
  • ⑨一時所得
  • ⑩雑所得

このうち、事業所得については所得税法第27条第1項に記載が有り、以下の様に定義されています。

事業所得とは、農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業その他の事業で政令で定めるものから生ずる所得(山林所得又は譲渡所得に該当するものを除く。)をいう。

要は、「対価を得て反復継続(繰り返し)行われる商売」が事業所得に該当するという事ですね。

一方の雑所得については、所得税法第35条でその定義が記載されています。

雑所得とは、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得及び一時所得のいずれにも該当しない所得をいう。

上記の所得のうち①〜⑨のいずれにも該当しないものが雑所得という事なので、ある意味分かりやすいですね。なお、一般的に雑所得として挙げられるものには年金や原稿料、印税などが有ります。

また、記事執筆時点(2017年9月)で話題になっていたビットコイン(仮想通貨)によって生じた利益も、原則は雑所得になります(参照元:国税庁 タックスアンサー「ビットコインを使用することにより利益が生じた場合の課税関係」。

つまり、事業所得は「継続的な商売によって生じた所得」で、雑所得は「雑所得以外のどの所得にも属しないもの」という事ですね。

では、なぜ「専業FXトレーダーによる所得が事業所得なのか雑所得なのか」、という話が出て来るのでしょうか。これについては、以下で見ていきましょう。

スポンサーリンク

FX専業の場合は事業所得?それとも雑所得?

FXによる所得は、冒頭でも書いた様に基本的に分離課税の雑所得として申告する事になります。しかし、分離課税になると「所得税15%+住民税5%の合計20%の税率」で税金計算をしなければなりません。

税金の負担

一方で、事業所得として申告する事が出来れば、総合課税の対象となるので所得税は5%〜45%の超過累進課税、住民税は一律10%の課税となります(平成25年〜平成49年までは、別途復興特別所得税として2.1%課税されます)。

つまり、所得税率が5%や10%()の方に課税される税金の合計は、雑所得として合計税率20%で申告するよりも少なくて済む可能性が有るのです。

所得税の速算表に記載されている税率は表面上の税率で、実際にはそこから控除額を引いた残額が所得税額となります。例えば、課税所得額が250万円の場合、適用される所得税率は10%ですが最終的な税額は15.25万円(=250万円×10%ー9.75万円)です。この場合、実質的な所得税率は6.1%となります。

また、雑所得よりも事業所得として申告した方が必要経費として認められる範囲が広い、と考えている人もいるでしょう(実際には事業所得だからといって経費が増える訳では有りません)。

他にも、事業所得として青色申告をすれば、損失が出た際に他の所得と損益通算する事が出来る、青色申告特別控除が受けられるなど色々なメリットが出て来るので、FXによる所得が事業所得か雑所得かを考える意義が有るのです。

提案する女性

では、FX取引が事業所得に該当するのかについて考えていきましょう。

まず、大前提として、税法上は「FX取引による利益が事業所得にならない」という規定が有る訳ではないです。従って、事業所得に該当する可能性は有ります。

FX取引は、上で登場した事業所得の定義中には明確に記載されていないので、該当するとすれば「その他の事業で政令で定めるもの」という事になりますね。

条文中にある「政令」とは、具体的には所得税法施行令第63条を指しています。そこでは以下の12の事業が記載されており、これらが事業所得の対象となるより具体的な事業ですね。

一  農業
二  林業及び狩猟業
三  漁業及び水産養殖業
四  鉱業(土石採取業を含む。)
五  建設業
六  製造業
七  卸売業及び小売業(飲食店業及び料理店業を含む。)
八  金融業及び保険業
九  不動産業
十  運輸通信業(倉庫業を含む。)
十一  医療保健業、著述業その他のサービス業
十二  前各号に掲げるもののほか、対価を得て継続的に行なう事業

ここでも、FX取引は明確には記載されていませんね。従って、該当するとすれば第12号の「前各号に掲げるもののほか、対価を得て継続的に行なう事業」となります。

では、FXは「対価を得て継続的に行なう事業」に該当するのでしょうか?

この点、基本的にFXは「対価を得て継続的に行なう事業」に該当しないと思っておいた方が良いでしょう。

×を出す男性

なぜなら、事業所得として認められるかどうかは、社会通念上「事業として認められるかどうか」で判断されるのが実務上の取扱だからです。

FX取引について考えてみると、一般的に投機という印象が強く、頻繁に取引していたとしても事業と言えるかどうかは微妙ですよね。従って、事業所得として認められる可能性が極めて低いのです。

実際にFXの利益について事業所得か雑所得かを争った事例をいくつか見てみましょう。

事業所得or雑所得に関する裁決事例1個目

裁判

まずは、平成22年2月16日裁決事例集No.79です。

これは、会社役員がFX取引で生じた損失を事業所得上の損失として申告し、他の所得と損益通算したところ税務署から否認されたケースです。

年間に約1,400回もの取引(取引金額1億3千万円超)をしていて、1日に費やす時間も15時間に及ぶので「事業に該当する」と主張したのですが、以下の様な理由で主張が退けられました。

  • FX取引は、投機の側面が強く継続的に安定収入が得られる可能性は低く、事業に馴染まない性質である。
  • FX以外に役員報酬が有り、それで生計を立てていた。
  • FX取引をするにあたって、相当程度の精神的・肉体的な労力が費やされたとは考えにくい。
  • FX取引をする為に、積極的な資金調達をしたとは認められない。
  • FX取引を継続的に行うための人的・物的設備が無い。

事業所得or雑所得に関する裁決事例2個目

次に、平成25年7月3日に判決の出た横浜地裁での裁判例です(参照元:国税庁)。

この件も上の例と同様に、給与所得の有る方がFXでの損失を事業所得として申告する事で損益通算をしようとしたところ、税務署に否認されたというケースです。

最終的に訴えは棄却されたのですが、その理由は、事業所得にするかどうかは以下の条件などから判断すべき所、総合的に判断すると事業とはいえないというものでした。

  • 継続的にFX取引等の投資行動を行っているか
  • 事業といえるだけの規模であるか
  • 事業としての外観を維持しているか
  • 生計を主としてFX取引等でまかなっているか

これらの裁決や判決が有る以上、FX取引を事業所得として申告するのは難しいでしょうね。但し、上記の例はあくまでも給与所得者がFX取引をした例です。

FX専業トレーダーがFXのみで生計を立てているのであれば、場合によっては事業所得として認められるケースも有るでしょう。といっても、かなり厳しいという事は知っておいて下さいね。

税務署に書類を受理されたからと言って事業所得でOKとなるわけではない

ネットを見ていると、以下の2点などから「FXは事業所得として申告が出来る!」と言っている方がいるようです。

  • 個人事業の開業届にFXを書いたけど、税務署から何も言われなかった。
  • 事業所得の中にFXを含めて申告したけど、税務署から特に何も言われていない。

しかし、これは間違いなので鵜呑みにしない様にして下さいね。

ちょっと待った

まず、開業届は明らかな間違いが無い限り税務署は受理して収受印を押してくれます(収受印を押すのはアルバイトの方というケースが多いです)。

また、税務署は形式的に明らかなミスが無い限り確定申告書を受け取ってくれるのです。

しかし、「受理された事と問題なかったという事は別」です。

問題が有る場合は、後日「お尋ね文書」や「税務調査」という形で指摘される事になります。その時に、正しい税額を計算して修正申告させられる事になりますよ。

従って、届出書や申告書が受理されたからといって、FXによる利益を事業所得として申告して良い事にはならないのです。

仮に、その場は何も無く済んだとしても、後々税務署から何かしらの形でアプローチの来る可能性が高いでしょう。

税務署は、FXによる取引をFX業者からの支払調書により把握しています(関連記事:【課税当局は見ている!】支払調書や財産調書などの提出義務まとめ)。支払調書上は利益が出ているのに、その方が分離課税の雑所得として確定申告をしていなかったら、税務署が疑問に思うのは当然ですよね・・・。

なお、「もともと青色申告をしている事業の収入にFXの利益を混ぜてしまえば問題無い!」、と言っている方もいますがこれも間違いです。事業所得を青色申告しているからといって、FXの利益を事業所得にして良いという事にはなりません。

仮に、本来の事業が200万円の赤字でFXで100万円の利益が出ていた場合、雑所得として申告すれば20万円(=100万円×20%)が税金になるのに対し、事業所得に含めてしまうと税金がゼロになってしまいますからね。

これが無条件に認められてしまうとしたらおかしい話ですよね・・・。

FX専業トレーダーの利益が事業所得として認められた場合、青色申告が良い?それとも白色申告?

以下は、「FX専業トレーダーの取引による利益が事業所得として認められた事」が前提の話です。

FX専業トレーダーの利益が事業所得として認められる場合、青色申告をした方が良いのでしょうか?それとも白色申告の方が良いのでしょうか?

確定申告をする女性

この点、事業所得として申告出来るのであれば、青色申告をした方が良いでしょう。

なぜなら、青色申告をすれば最大65万円の青色申告特別控除を受けたり、損失が出た際に翌年以降3年間にわたって繰り越しする事が出来るからです。

FX取引の場合は、FX業者から取引報告書を入手する事が出来るので、収入の把握や記帳は簡単です。それに、平成26年以降は白色申告の方にも帳簿の保存が義務付けられているので、白色申告を選ぶメリットは特にありません(参照元:国税庁 タックスアンサー「白色申告者の記帳・記録保存制度」)。

従って、特段の理由が無い限りは青色申告を選択する様にしましょう。

まとめ

いかがでしたか?FX専業トレーダーとはいえ、FXによる利益を事業所得として認めてもらう事は難しい事が分かりましたね。

仮に事業所得として認められたとしても、利益が出て税率が高くなればなるほど分離課税の雑所得として申告した方が良かった・・・と思う様な気はしますけどね。

基本的にFXの利益は事業所得としては認められないでしょうが、曖昧とも言える部分です。気になる方は、所轄の税務署で自分の取引状況を説明して、相談してみる事をオススメします。
スポンサーリンク