「会社で払う税金ってどんなものがあって税率はいくらなの?資本金や利益によって納税額が変わるの?」
これから法人を作ろうと考えている方や、最近会社を作った方の中にはこういった疑問を抱いている方も多いでしょう。
会社の税金は、個人の所得税等と違って計算過程が複雑です。そのため、「所得○○万円だけど納税額いくら?」と聞かれて、納税額をパッと正確に計算出来る税理士もなかなかいないでしょう(概算は簡単に出ますけどね)。
そこで、ここでは会社の税金にどういうものがあり、税率はどれくらいなのかなどについて、分かり易く解説していこうと思います。
会社に課される税金のメインは「法人税」「(法人)住民税」「(法人)事業税」の法人3税!
会社に課税される税金としてメインとなるのは、「法人3税」と言われる以下の3つの税金です(法人3税をまとめて「法人税等」と呼ぶのが一般的です)。
- 法人税(地方法人税も含む)
- 法人住民税
- 法人事業税(地方法人特別税も含む)
それぞれの立ち位置を簡単に図式すると、以下の様な感じとなります。
以下で、それぞれの税金について内容をみていきましょう。
「法人税」は会社の所得に応じて課税される!
まず法人と言えばこれですね、法人税。
法人税は、1事業年度の間に会社に発生した所得に応じて発生する税金(国税)で、税務署に納付する事になります。納付期限は確定申告期限と同じ、決算日後2ヶ月以内です。
例えば、3月決算の会社の場合は5月31日にまでに確定申告書の提出及び法人税の納付をしなければなりません。
参考:上場企業など(会計監査人設置会社)で特別な事情がある場合は、税務署に申請をして承認を得れば申告期限を1ヶ月延長する事が出来ます(参照元:国税庁)。
なお、法人税は所得に応じて発生するものなので、赤字の場合は法人税は発生しません。
法人税の税率は、会社の規模や所得金額によって以下の様に異なります。
◆中小法人(資本金の額1億円以下 ※)◆
所得金額 | 平成28年4月1日以降開始事業年度 | 平成30年4月1日以降開始事業年度 |
---|---|---|
年800万円以下の部分 | 15% | 15% |
年800万円超の部分 | 23.4% | 23.2% |
◆中小法人以外の法人(資本金の額1億円超)◆
平成28年4月1日以降開始事業年度 | 平成30年4月1日以降開始事業年度 |
---|---|
23.4% | 23.2% |
※:法人税法第57条11項
中小法人は年800万円を境に税率が変わっていますが、800万円を超えると全所得の税率が変わるという訳ではなく、800万円を超えた部分について高い税率が適用されます。
例えば、所得が1,000万円の場合の法人税は、800万円×15%+(1,000万円−800万円)×23.4%=166.8万円ですね。
参考:東日本大震災の復興財源に充てるために、平成24年から「復興特別法人税」が課されていましたが、平成27年に終了しています。
参考までに、過去の法人税率の推移は以下の通りとなっています。
平成になってからは、年々法人税率が下がっていっている事が分かりますね。
【参考】法人税って会社にしか課税されない?
株式会社等の会社に法人税が課されるのはわかりますよね。しかし、法人は会社の他にも色々あります。そして、会社以外の法人にも法人税は課されるのです。何せ、「株式会社税」ではなく「法人」税ですからね。
法人税が課される法人等には、以下の様なものがあります。
法人の形態 | 法人の例 | 課税の有無 |
---|---|---|
公共法人 | 都道府県や市区町村 | 課税されない |
公益法人等 | 学校法人や宗教法人、NPO法人 | 収益事業は課税 |
人格のない社団等 | PTA | 収益事業は課税 |
協同組合等 | 生協や農協 | 課税 |
普通法人 | 株式会社 | 課税 |
NPO法人や公益法人等は「収益事業をしていない限り法人税が課されない」、という点がポイントですね。
なお、収益事業とは、物品販売業や製造業など法定の34事業の事をいいます(法⼈税法施⾏令第5条1項)。
「地方法人税」は地方という名前だけど国に収める税金!
地方法人税は、平成26年3月31日に公布された「地方法人税法」によって登場した比較的新しい税金です。
地方法人税という名前なので、一見すると地方税の様な気もしますが、れっきとした法人税(国税)です。従って、法人税の確定申告時に一緒に作成して提出・納付をする事になります。
地方法人税は、法人税と連動しており、各課税事業年度の「課税標準法人税額 ※」に4.4%の税率を掛けて算出します。
※:別表一(一)「4」欄+別表一(一)「5」欄+別表一(一)「7」欄+別表一(一)「9」欄+別表一(一)「10の外書」欄
会社の所得の4.4%ではなく、あくまでも「課税標準法人税額の4.4%」という点に注意が必要ですね。
なお、法人税額に連動しているので、法人税と同様に赤字の場合は税額がゼロとなります。ただし、その場合でも確定申告は必要なので忘れずに!
法人住民税(都道府県税・市区町村税)
法人住民税は、個人が収めている住民税の法人版ですね。法人は人ではないですが、法人格(※)を持つので、人と同じ様に住民税が課税されるのです。
※:権利・義務の主体となることのできる法律上の資格の事。自然人(人間のこと)と法人とに分かれる。
課税されるのは、以下の条件を満たす法人です(地方税法第24条・294条)。
・市内に事務所または事業所を有する法人
・市内に寮、宿泊所、クラブ等を有する法人でその市内に事務所または事業所を有しないもの
・市内に事務所、事業所または寮等を有する法人でない社団または財団で、代表者または管理人の定めのあるもの
参考:事務所等と認められるのは、「人的設備・物的設備・事業の継続性」の3要件を満たしたものです。従って、自己所有かどうかは問わないですし、資材置き場や車庫など物的設備しか満たさない様なものは課税されません。
法人住民税は、都道府県に収めるものと市区町村に収めるものとに分かれ、その中でも以下の2種類に分かれます。
- 法人税割額
- 均等割額
以下で、法人税割額と均等割額のそれぞれについて簡単に説明しますね。
法人税額に応じて課税される「法人税割額」
法人税割額は、法人税の金額に一定の税率を掛けたものです。
税率は、地方税法によって定められているのですが、市町村民税と都道府県民税を足した合計を、標準税率(最低=12.9%)と制限税率(最高=16.3%)の範囲内で、自治体が自由に決められる様になっているので、一概にいくらという事は出来ません。
参考:県税は3.2%〜4.2%、市税は9.7%〜12.1%。合計で12.9%〜16.3%(地方税法第51条・344条の4)。
ただし、多くの自治体が標準税率を採用しているので、法人税割額は12.9%と考えておくといいでしょう。
なお、法人税の金額に税率を掛けるので、赤字の場合は法人税割額はかかりません。
赤字でも払わないといけない「均等割額」
均等割額は、事業をしている限り赤字でもかかる税金です。それ故に、法人を設立するデメリットとして挙げられる事が多いものですね。
均等割額は自治体によって金額が若干変わりますが、標準税率では年額7万円(市民税5万円・県民税2万円)となっています。
なお、均等割額は資本金や従業員の数によって異なり、標準税率は以下の通り(地方税法第52条・312条)。
◆道府県民税均等割
資本金等の額 | 税率 |
---|---|
1,000万円以下 | 年額20,000円 |
1,000万円超1億円以下 | 年額50,000円 |
1億円超10億円以下 | 年額130,000円 |
10億円超50億円以下 | 年額540,000円 |
50億円超 | 年額800,000円 |
◆市町村民税
資本金等の額 | 市内事業所の従業員合計 | 税率 (年額) |
---|---|---|
1,000万円以下 | 50人以下 | 5万円 |
〃 | 50人超 | 13万円 |
1,000万円超1億円以下 | 50人以下 | 13万円 |
〃 | 50人超 | 15万円 |
1億円超10億円以下 | 50人以下 | 16万円 |
〃 | 50人超 | 40万円 |
10億円超50億円以下 | 50人以下 | 41万円 |
〃 | 50人超 | 175万円 |
50億円超 | 50人以下 | 41万円 |
〃 | 50人超 | 300万円 |
参考:年額が最低金額となるのは、株式会社の他に「公共法人・公益法人等、人格のない社団、一般社団法人・一般財団法人、保険業法に規定する相互会社以外の法人で資本金等の額を有しないもの」があります。
資本金が1,000万円を超えると一気に均等割額が増えるので、会社設立時に1,000万円を超えるかどうかの判断で、均等割額を用いる事がよく有りますね。
なお、均等割額は事業所が市(政令指定都市では区)や都道府県をまたぐ毎に課税されるので、幅広く事業展開するとそれだけ均等割額は増えることになります。
例えば、神奈川県川崎市と千葉県柏市に事業所のある会社(資本金500万円・従業員数10人)の場合、法人市民税の均等割として10万円(5万円×2箇所)、法人県民税の均等割として4万円(2万円×2箇所)の合計14万円が課税される、という事ですね。
法人事業税(道府県民税)
事業税は、県内に事務所や事業所(本店や支店、工場etc)がある会社が負担する地方税です。法人住民税(県民税)とセットで申告するものなので、申告書も同じです。
納付額は「課税標準額×税率」で、所得等によって税率が異なるので以下の表を参照してください(平成26年10月1日以降開始事業年度)。
注:ここでは中小企業を前提としているので、外形標準課税については省略します。
所得金額 | 標準税率 | 超過税率 |
---|---|---|
年400万円以下 | 3.4% | 3.65% |
年400万円超800万円以下 | 5.1% | 5.465% |
年800万円超 | 6.7% | 7.18% |
なお、超過税率とは法人住民税(法人税割額)の制限税率のようなもので上限税率です。都道府県が必要財源等の状況に応じて税率を決定します。
たとえば兵庫県だと「県内産業の発展や県民生活の安定基盤となる産業・雇用の復興のための財源」として昭和51年3月から徴収が始まっていますね(兵庫県/法人事業税の超過課税)
参考までに、消費税が引き上げられる平成31年10月1日以降開始事業年度からの法人事業税率についても載せておきますね。
所得金額 | 標準税率 | 超過税率 |
---|---|---|
年400万円以下 | 5% | 5.25% |
年400万円超800万円以下 | 7.3% | 7.665% |
年800万円超 | 9.6% | 10.08% |
「地方法人特別税」は国税だけど住民税と一緒に申告!
地方法人特別税は、上で出て来た地方法人税と名前が似ていて間違えやすいですが、法人事業税とセットで申告をする国税です(申告や納税には、道府県民税の申告書・納付書を使用)。
法人事業税とセットで都道府県民税の申告書を使うのに「国税」、という実にややこしい税金ですね。
平成20年10月1日以降開始事業年度から適用されており、税額は基準法人所得割額の43.2%です。
参考:基準法人所得割額は、標準税率で計算した法人事業税所得割額の事。超過税率が適用されている法人は標準税率で計算。また、外形標準課税適用法人は基準法人所得割額の414.2%。
会社の税金はざっくり何パーセント?法定実効税率で概算額を知る!名目税率との違いも。
法人3税について見てきましたが、所得の○%や法人税額の○%など計算方法が色々合って、結局のところ税金はどれくらいかかるのか、というのが分かりにくいですよね。掛ける元になる数値が違うので、単純に税率を足すだけでは合計の税率が出ません。
そこで、以下では会社の税金がざっくり何パーセントかかるのかを簡単に算出する方法を教えますね。使用するのは「表面税率」と「実効税率」です。
表面税率
表面税率とは、所得に対して申告・納税する際に使用する税率を全て合わせたものを言います。つまり、決算でどれくらい納税する事になるのかが分かる率ですね。
表面税率は以下の計算式で算出することが出来ます。
※:地方法人特別税を含む
上で紹介した法人税等の税率を元に、資本金が1億円以下の中小法人の表面税率(平成28年4月〜平成30年3月末までに開始する事業年度)は以下の通りです。
所得金額 | 表面税率 |
---|---|
400万円以下 | 22.464% |
400万円超800万円以下 | 24.898% |
800万円超 | 37.042% |
ただし、注意点が有ります。表面税率は、あくまでも所得に対してどれくらいの税金を負担しなければならないかを示すものに過ぎません。
法人税等のうち、事業税については支払った事業年度に損金算入が可能です。従って、事業税を払った分翌事業年度の税額は減ることになります。
ところが、この税金が減る分について表面税率では加味されていません。そこで、翌事業年度に事業税が損金算入されることによる効果を、反映させてあげる必要があるのです。
そして、その事業税の損金算入効果を加味した税率が、次に出てくる法定実効税率ですね。
税金の負担額を算出する場合は、別途均等割額を足す事を忘れずに。
法定実効税率
上述した様に、表面税率では事業税が支払った事業年度に損金算入される事による減税効果が加味されていません。
そこで、事業税による翌事業年度の実質負担額の減少分を加味した税率を「法定実効税率」と呼びます。
法定実効税率の算出方法は以下の通り。
※:地方法人特別税を含む
上記計算式によって計算した法定実効税率(平成28年4月〜平成30年3月末までに開始する事業年度)は、以下の様になります。なお、東京都の中小法人を想定した実効税率です。
所得金額 | 法定実効税率 |
---|---|
400万円以下 | 21.421% |
400万円超800万円以下 | 23.204% |
800万円超 | 33.800% |
色々な税率が出てきたけど、中小企業は基本的に所得に対して20%ちょっとの税金を払えば良い、ということが分かりますね。一昔前だと、「法人税は40%!」と覚えていた方も多いでしょうが、最近は中小企業に関してはそこまで高くはないのです。
ただし、所得金額が800万円を超えたら、負担税率が一気に上がる点は押さえておいた方が良いでしょう。
【参考】日本の法定実効税率は他の国と比べると高い?低い?
日本の法定実効税率について見てみましたが、他の国と比べると高いのでしょうか?それとも低いのでしょうか?
財務省が2017年1月に公表したデータによると、以下の通りとなっています(標準税率で比較)。
これを見ると、日本は結構高い税率である事が分かりますよね。GDPの高い国が法定実行率も高い、という訳ではなさそうですね。高い税金をとってそれが福祉等のサービスでうまく還元されていれば良いのですけどね・・・。
申告間違いや延滞、脱税等があった場合は加算税も!
会社で発生する主要な税金について紹介してきましたが、これらはあくまでも期限内に正しく申告した場合に発生する税金です。
中には以下の様な方達もいるでしょう。
- 確定申告は期限内したけど、期限までに税金を納付する事ができなかった。
- 期限内に確定申告をしなかった。
- 源泉所得税の納付を期限内にしなかった。
- 税務調査が入って、間違いが発覚し修正申告が必要となった。
- 税務調査が入り、脱税が発覚し修正申告が必要となった。
上記の様なケースでは、本来納付すべき金額は当然のこと、それに加えて延滞税や加算税といった罰金の様なものも払わなくてはいけなくなります。
発生する加算税等は以下の5種類です(地方税の場合は、下記の「税」が「金」に変わります)。
- 延滞税
- 不納付加算税
- 過少申告加算税
- 無申告加算税
- 重加算税
これら加算税の詳細については、「法人の無申告加算税や延滞税などペナルティーのまとめ」で詳しく解説しているので参考にしてください。
会社に課税されるその他の税金
会社に課税される税金のメインとなる法人3税を紹介しましたが、他にも法人に課税される税金は色々有ります。
以下で、その他の税金として法人に課税されるものを、簡単にみていきましょう。
消費税・地方消費税
消費税(地方消費税)は、上述した法人3税には含まれていないですが、会社が確定申告する際、消費税の納税義務者がセットで申告する国税です。税率は8%(消費税6.3%・地方消費税1.7%)。
簡単に消費税が何なのかを、飲食店を例に説明してみましょう。
飲食店では、お客さんから飲食の代金をもらいますよね。この代金には消費税が含まれています。
一方で、その料理を作るには食材の仕入れや光熱費、調理道具などが必要です。これらの支払にも消費税は含まれていますよね。
つまり、飲食店は売上の時点で消費税を預かって、仕入れなどの時点で消費税を支払っているという事です。この預かった消費税と支払った消費税の差額が、税務署に対して納付する消費税という訳ですね。
とはいっても、全ての会社が消費税を納付しなければならない、という訳ではなく納税義務者となる基準が有ります。
納税義務者は、2事業年度前の課税売上が1,000万円超の会社です。設立1期目の場合は過去の事業年度が無いので、基本的に最初の2事業年度は免税です。
ただし、資本金が1,000万円以上の会社は設立1期目から消費税の納税義務者となります(参照元:国税庁)。
納税義務の有無について、4月1日に設立した3月末決算の会社(資本金500万円)を例に、以下の図で見てみましょう。
1期目 | 2期目 | 3期目 | 4期目 | 5期目 | |
---|---|---|---|---|---|
課税売上 | 1,200万円 | 1,500万円 | 900万円 | 1,200万円 | 1,400万円 |
納税義務 | 免税 | 免税 | 課税 | 課税 | 免税 |
資本金が1,000万円未満なので1期目・2期目は免税事業者ですが、1期目の売上が1,000万円を超えているので3期目は課税事業者、3期目が1,000万円を切ったので、5期目には再度免税事業者に戻っていることが分かりますね。
なお、上記は原則の取り扱いで、平成23年6月の税制改正により以下の条件を満たす会社は、翌事業年度から消費税の納税義務者となるので注意が必要です。
- 1事業年度前の上半期の課税売上が1,000万円を超える
- 1事業年度前の上半期の給料支払額が1,000万円を超える
所得税
「会社なのに所得税?」と思うかもしれないですが、会社にも実は所得税が課税される事があるのです。
それは、金融機関等から利子や配当をもらった場合ですね。個人でも預金利子を受け取る際に税金が控除されてますよね?それと同じです。
会社が利子や配当を受け取る場合、額面に対して15.315%の所得税及び復興特別所得税が控除されます。払った所得税は申告の際に法人税から控除、もしくは赤字の場合は還付をしてもらう事が可能です。
参考;従来は、個人と同様に住民税も5%控除されていたのですが、平成28年1月1日以降発生する利子等からは住民税(利子割と言います)が控除されなくなりました。
源泉所得税
上で書いた所得税と同じ「所得税」に代わりはないのですが、上の所得税が会社に課税されているのに対して、この源泉所得税は従業員や役員個人に対して課税されているものです。
会社が従業員や役員に対して給与や賞与などを支給する場合、一定の額を源泉所得税として天引きし、それを毎月(特例適用の場合は7月と1月の年2回)国に収めなければなりません。
参考:外注に報酬(講師料や原稿料、税理士報酬や弁護士報酬etc)を払った時は10.21%の源泉徴収が必要となります。
給料等から源泉徴収する税額は、給料の額や年末調整をするかどうか(甲欄・乙欄等)、扶養親族の有無等によって異なります。詳しくは源泉徴収税額表を参考にしてください。
個人住民税特別徴収分
従業員や役員等から所得税を源泉徴収するのと同様、住民税についても従業員等から毎月天引きして会社が代わりに市町村に納付しなければなりません。そして、これを「特別徴収」と言います(参照元:地方税法第42条・321条の4)。
納付や申告を従業員に任せていたら、申告しない人や間違える人がたくさん出てくるから、事務手続きの簡略化の為に会社に義務を課したのでしょうね。
なお、住民税の税率は個人の課税所得の10%で、毎月6月に翌年5月分までの個人別明細が会社に送られてきます。源泉所得税同様、原則は毎月10日までの納付ですが、申請によって半年に1回の納付にする事も可能。
参考:法律上は特別徴収が義務なのですが、勝手に普通徴収(従業員等が自分で納付)を選択する事業者が多かったので、近年自治体ごとに特別徴収の徹底化の為の取組が始まっています。
印紙税
印紙税は、領収書や契約書などを作成した際に課税される税金(国税)です。高い買い物をすると領収書に印紙が貼られているのを見かける事がありますよね。
印紙税に関しては、税金を直接税務署に収める訳ではなく、領収書等に購入した印紙を貼り付けて消印する事で納税した事になります。
参考:印紙はコンビニや郵便局、チケットショップなどで売っています。
印紙税の額は、課税文書(領収書や契約書)の種類によって異なり、国税庁のホームページで印紙税の一覧表が公開されているので、そちらを参考にしてください。
登録免許税
登録免許税は、主に会社設立時や登記を変更する時などに法務局で収める税金(印紙を買って申請書に貼る)です。不動産の登記の際にも登録免許税はかかりますね。
登録免許税の額は、不動産の価額や登記の内容によって異なります。国税庁のホームページに行くと一覧形式で紹介されているので、具体的な金額はそちらを参考にしてみてください。
不動産関係の税金(取得税・固定資産税・都市計画税)
不動産を購入すると、不動産取得税が課されます。税率は、固定資産税評価額の4%(or3%)です。特段自分で申告する必要はなく、不動産を取得すると後日役所から納付書が送られてきますよ。
固定資産税は、土地や建物などの不動産を持っている場合に課税されます(毎年1月1日時点の所有者)。都市計画税は固定資産税とセットとなって課税される税金です。
税率は、固定資産税が課税標準額の1.4%(標準税率)、都市計画税が課税標準額の0.3%(制限税率)となっています(参照元:地方税法第350条第1項・702条の4)。
償却資産税
固定資産税は不動産自体に課税される税金ですが、償却資産税は建物に付属する設備や機械装置、工具器具備品などの減価償却をする固定資産に対して課税される税金です(税率は1.4%)。
なお、減価償却をする固定資産のうち、車に関しては自動車税が別途課されるので、償却資産税は課税対象外となっています。
自動車に関連する税金(取得税・重量税・自動車税)
会社が自動車を持っているときにかかる税金としては、以下のようなものが有ります。
- 自動車取得税・・・取得時に価格に応じて課税
- 自動車重量税・・・車検時に車重に応じて課税
- 自動車税・軽自動車税・・・毎年排気量に応じて課税
事業所税
「事業所税なんてそもそも聞いたことが無い」という方も多いかもしれないですね。昭和50年に登場した税金で、主に人口が30万人以上の都市で課税される地方税です。
税率は以下の通り(地方税法701条の42)。
- 資産割・・・事業所の面積1平米につき600円
- 従業者割・・・従業員に対する給与支払総額の0.25%
ただし、市内にある事業家屋の床面積合計が1,000平米以下の場合や、市内にある事業所の従業者数合計が100人以下の場合は課税されません(地方税法701条の43)。
参考:百貨店やホテル、従業員の為の福利厚生施設など非課税となる施設も有ります。
会社の税金は決算書(損益計算書)のどこに記載される?
会社の税金を色々紹介してきましたが、決算書(損益計算書)上はどこに税金が記載されているのでしょうか?
この点、会社によって多少の処理の違いはあるかもしれませんが、基本的に以下の通りです。
販管費の「租税公課」か、税引前利益の後の「法人税等」という事ですね。
なお、従業員等から預かっている源泉所得税や特別徴収の住民税は、貸借対照表(B/S)の「預り金」で処理します。単に預かっているだけなので費用にはなりません、悪しからず。
FX法人を例に法人税等の額を試算!
このサイトはタイトルからわかる様に、基本的にFXトレーダーがメインで見る事を想定しているので(もちろんそれ以外の業種でもOK)、FX法人を例に法人税等の額を試算してみましょうか。
【大前提】
法人の税期は「利益」で決まるのではなく「所得」で決まります。両者の何が違うかというと、利益は会計上の数値で所得は税務上の数値です。
中小企業の場合は、基本的に利益と所得の間にあまり違いが生じないのですが、至極簡単に説明しますね。
例えば、接待交際費は1事業年度で損金にできるのは、原則800万円となっています。それなのに1年で1,000万円かかった場合、上限を超えた200万円については会計上の費用にはなりますが、税務上の損金にはなりません(上限を超えて払っても税金は安くならない)。
そこで、この200万円について、会計上の利益から200万円加算調整する事で、正しい税額を計算するのです。仮に会計上の利益が500万円だった場合、所得は700万円(=500万円+200万円)になるという事ですね。
FX法人(平成29年12月決算・本社埼玉県さいたま市)の売上や経費が以下の様なケースで、どれくらい税金がかかるのか見てみましょう(分かりやすくするため、必要な項目した記載していません)。
項目 | 金額 |
---|---|
売上(FX取引の利益) | 2,500万円 |
販売費及び一般管理費 | |
役員報酬 | 2,000万円 |
交際費 | 50万円 |
その他 | 150万円 |
販管費合計 | 2,200万円 |
税引前当期純利益 | 300万円 |
法人税等 | 64.18万円 |
当期純利益 | 235.82万円 |
会計上の税引前利益が300万円の場合ですね、このケースだと法人税等として支払う金額は以下の通りとなります。
項目 | 計算式・金額 |
---|---|
法人税 | 300万円×15%=45万円 |
地方法人税 | 45万円×4.4%=1.98万円 |
法人住民税 | 45万円×12.9%=5.8万円 |
法人事業税 | 300万円×3.4%=10.2万円 |
地方法人特別税 | 10.2万円×43.2%=4.4万円 |
住民税均等割 | 5万円+2万円=7万円 |
税金合計 | 74.38万円 |
300万円に対して74万円なので、納付する税額は所得の約25%ですね。なお、均等割を除いた表面税率は22.46%になるので、上で紹介した表面税率と一致しています。
まとめ〜各種税金の税率や支払の時期を一覧表形式で〜
会社に課税される税金について色々紹介してきました。法人独特なのは法人税・法人住民税・法人事業税ですが、他にも様々な税金が必要ということが分かりましたね。
なお、これらの税率をわざわざ覚える必要はありません、その場その場で最新の情報を調べるのでOKだと思いますよ。強いて言えば、法定実効税率くらいですかね、頭にいつも入れておくといいのは。
ちなみに、会社の事業内容によっては、酒税やタバコ税、関税などもかかることがありますよ。
最後に、ここで紹介した税金や税率を一覧表にしておきますね。
税金の種類 | 納付時期 | 税率 |
---|---|---|
法人税 | 決算終了後2ヶ月以内 | 課税所得の15%(or23.4%) |
地方法人税 | 〃 | 法人税額の4.40% |
法人住民税 | 〃 | 法人税割額:法人税額の12.9% 均等割額:年額7万円 |
法人事業税 | 〃 | 課税所得の3.4%(or 5.1%or6.7%) |
地方法人特別税 | 〃 | 基準法人所得割額の43.20% |
消費税・地方消費税 | 〃 | 8% |
所得税 | 利息等を受け取る都度徴収される | 源泉徴収税額表による |
源泉所得税 | 毎月10日or7月と1月の年2回 | 報酬額(税抜)の10.21% |
個人住民税(特別徴収) | 毎月10日or7月と1月の年2回 | 10% (役所からの通知額) |
印紙税 | 契約や料金の受領時 | 領収金額等による |
登録免許税 | 登記時 | 登記内容による |
不動産取得税 | 不動産取得の数ヶ月後 | 4%(or3%) |
固定資産税 (都市計画税) | 年4回分割納付(4・7・12・2月) | 固定資産税:1.4%(1.7%) |
償却資産税 | 年4回分割納付(4・7・12・2月) | 1.40% |
自動車取得税 | 取得時 | 取得価額による |
自動車重量税 | 車検時 | 車重による |
自動車税 | 毎年5月 | 排気量による |
事業所税 | 決算終了後2ヶ月以内 | 資産割:1平米につき600円 従業者割:給与支払総額の0.25% |