中小機構が運営している小規模企業共済と経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)は、掛金が全額所得控除又は必要経費(損金)となることから、個人事業主や中小企業にとても人気が有ります。
これらを節税の為の道具と考えている方も多いでしょうが、両者には便利な貸付制度も有るって知っていますか?
銀行や信用金庫だと、いざというときにすぐお金を貸してくれるくれるとは限らないですが、小規模企業共済や経営セーフティ共済は簡単な手続で迅速にお金を借りる事が出来るので、とても役に立ちますよ!
ここでは、小規模企業共済と経営セーフティ共済の貸付制度を比較し、それぞれの特徴や違いを見ていきましょう。
参考:掛金が全額所得控除になるという意味で性質の似ているiDeco(確定拠出年金)や国民年金基金には、貸付制度は用意されていません。
記事内の情報は、小規模企業共済については「加入者のしおり約款(平成28年4月4版)」、経営セーフティ共済は「中小企業倒産防止共済 加入者必携(平成 23年10月版)」等を参考に記載しています。いずれも平成29年6月22日時点で最新版です。
小規模企業共済の貸付制度は7つ!
小規模企業共済の契約者が利用出来る貸付制度は、以下の7種類です。
- 一般貸付け
- 緊急経営安定貸付け
- 傷病災害時貸付け
- 福祉対応貸付け
- 創業転換時・新規事業展開等貸付け
- 事業承継貸付け
- 廃業準備貸付け
参考:一般貸付け以外の貸付は「特別貸付け」に分類されます。
以下で1つずつ内容を見ていきましょう。
一般貸付け
一般貸付けは、事業(関連)資金が必要になった契約者に簡単な手続で迅速に貸付けをする制度です。
貸付の要件
契約者が一般貸付けを受けるには、以下の要件を満たす必要が有ります。
- 共済に加入してから貸付資格判定時期までに、12ヶ月以上の掛金(前納分は含まない)を納付している。
- 掛金納付月数に応じて算出される貸付限度額が、貸付資格判定時期に10万円以上ある。
なお、貸付資格判定時期については以下を参照して下さい。
借入申込期間 | 貸付限度額の算定基準日 |
---|---|
4月1日〜9月30日 | 前年の10月末日 |
10月1日〜3月31日 | 当年の4月末日 |
借入の手続
一般貸付けを受ける場合、共済契約時に登録している代理店(※)で申込及び借入の手続をする事になります。
※:登録申し出が無い場合は、商工組合中央金庫の本店又は支店
申込手続には、以下の資料が必要です。
- 貸付金借入申込書(代理店窓口で貰えます)
- 契約者本人の実印
- 発行後3ヶ月以内の印鑑証明書(原本)
- 収入印紙
- 共済契約者番号が掲載されている中小機構からの送付物 ※
- 【借換えの場合】借入額に応じた利子
※:「貸付限度額のお知らせ」「借入資格取得通知書」「ご返済期日到来の案内」「共済手帳」など。
なお、貸付を受けるには貸付金額に応じた収入印紙を用意しておかなければなりません。
必要となる収入印紙の額は、以下の通りです(他の貸付制度でも同様。)
貸付金額 | 収入印紙の金額 |
---|---|
5万円〜10万円 | 200円 |
15万円~50万円 | 400円 |
55万円~100万円 | 1,000円 |
105万円~500万円 | 2,000円 |
505万円~1,000万円 | 1万円 |
1,005万円〜5,000万円 | 2万円 |
5,005万円~8,000万円 | 6万円 |
なお、商工中金で借入申込をすると午後2時までに手続が終わればその日のうちに貸付を受ける事が出来ます。他の金融機関の場合は、申込をしてから2〜3日程度かかる事が有るので、事前にどれくらいかかるのか確認しておいた方が良いでしょう。
貸付限度額
掛金の範囲内(納付月数によって、掛金の7〜9割)
貸付額
10万円〜2,000万円
参考:他の契約者貸付を併せて借りる場合、2,000万円が上限となります。
貸付金の使途
事業資金(運転資金や設備資金)、事業関連資金
貸付期間
貸付期間は、貸付額によって以下の様に異なります。
貸付額・期間 | 6ヶ月 | 12ヶ月 | 24ヶ月 | 36ヶ月 | 60ヶ月 |
---|---|---|---|---|---|
100万円以下 | ○ | ○ | × | × | × |
105〜300万円 | ○ | ○ | ○ | × | × |
305〜500万円 | ○ | ○ | ○ | ○ | × |
505万円以上 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
償還方法
一般貸付けの返済は、貸付期間によって以下の様に方法が異なります。
- 貸付期間が6・12ヶ月・・・期限一括償還
- 貸付期間が24・36・60ヶ月・・・6ヶ月毎の元金均等割賦償還
注:返済期限に遅れると、期日以降は年14.6%の延滞利子が課されます。
貸付利率
年1.5%
なお、利子は期限一括償還の場合は貸付時に一括前払い、割賦償還の場合は貸付時と6ヶ月毎の返済時に6ヶ月分の前払いをする事になります。
担保・保証人
いずれも不要です。
緊急経営安定貸付け
緊急経営安定貸付けは、経営環境の変化等により一時的に売上が減少し、資金繰りが苦しくなった契約者に対して事業資金を貸し付ける制度です。
貸付の要件
緊急経営安定貸付けを受ける事が出来るのは、一般貸付の資格を取得している契約者の内、商工会や商工会議所、中小企業団体中央会等の団体から以下のいずれかに該当する確認を受けた方です。
- 直近3ヶ月又は6ヶ月の売上高が、前年同期と比べて5%以上減少し、かつ、今後も減少が見込まれている
- 直近3ヶ月又は6ヶ月の売上高が、2年前又は3年前の同期と比べて5%以上減少し、かつ、前年同期に比べて減少しており、かつ、今後も減少が見込まれている
- 中小機構が認める要因の影響を受けて、1ヶ月間の売上高が前年の同月に比べて急激に減少する事が見込まれている
借入の手続
緊急経営安定貸付け制度を利用する場合は、小規模共済融資課での申込が必要です。申込内容の審査を経て、貸付決定となると中小機構から「貸付決定通知書」が送られて来ます。
通知書が届いたら必要書類等を持って、商工組合中央金庫(商工中金)の本店又は支店に行きましょう。そこで実際にお金を借りる事が出来ます。
貸付限度額
掛金の範囲内(納付月数によって、掛金の7〜9割)
貸付額
50万円〜1,000万円
参考:他の契約者貸付を併せて借りる場合、2,000万円が上限となります。
貸付期間
貸付期間は、貸付額によって以下の様に異なります。
- 貸付額が500万円以下・・・36ヶ月
- 貸付額が505万円以上・・・60ヶ月
償還方法
6ヶ月毎の元金均等割賦償還です。
注:返済期限に遅れると、期日以降は年14.6%の延滞利子が課されます。
貸付利率
年0.9%
なお、利子は貸付時と6ヶ月毎の返済時に6ヶ月分の前払いをする事になります。
担保・保証人
いずれも不要
傷病災害時貸付け
傷病災害時貸付けは、疾病や負傷による一定期間の入院又や災害救助法の適用された災害等、一般災害(火災・落雷・台風・暴風雨等)による被害の為に、安定した事業経営に支障が生じた場合に契約者が貸付を受ける事が出来る制度です。
貸付の要件
傷病災害時貸付けを受ける事が出来るのは、一般貸付の資格を取得している契約者の内、以下のいずれかに該当する方です。
- 傷病時 ・・・疾病または負傷の場合は、5日以上入院(退院後の通院を含め5日間)した事について証明を受けている
- 災害時①・・・災害救助法が適用された災害またはこれに準ずる災害として機構が認める災害の場合、市町村の商工会、商工会議所、中小企業団体中央会から資格要件について証明を受けている。
- 災害時②・・・一般災害の場合は、罹災について市町村・消防署等から罹災証明を受けている
なお、申込が出来るのは、傷病の場合は入院した日から6ヶ月以内、災害の場合は災害が発生した日から6ヶ月以内です。
借入の手続
傷病災害時貸付け制度を利用する場合、傷病時貸付けと災害時貸付けとで申込窓口が異なります。
まず、傷病時貸付けの場合は小規模共済融資課に申込をしましょう。申込内容の審査を経て、貸付決定となると中小機構から「貸付決定通知書」が送られて来ます。
そして、通知書が届いたら必要書類等を持って、商工組合中央金庫(商工中金)の本店又は支店に行きましょう。そこで実際にお金を借りる事が出来ます。
参考:東日本大震災の被災者に対する「特例災害時貸付け」を利用する場合は、傷病時貸付けと同様の手続が必要です。
一方で、災害時貸付けの場合は必要書類を持って商工中金の本店または支店に行き、申込・借入れの手続きをする事になります。
貸付限度額
掛金の範囲内(納付月数によって、掛金の7〜9割)
貸付額
50万円〜1,000万円
参考:他の契約者貸付を併せて借りる場合、2,000万円が上限となります。
上限は1,000万円ですが、共済契約者が前年度決算数値に基づいて以下の計算し、計算結果が1,000万円を超える場合はその金額が貸付限度額となります。
貸付金の使途
事業資金(運転資金・設備資金)
貸付期間
貸付期間は、貸付額によって以下の様に異なります。
- 貸付額が500万円以下・・・36ヶ月
- 貸付額が505万円以上・・・60ヶ月
償還方法
6ヶ月毎の元金均等割賦償還です。
注:返済期限に遅れると、期日以降は年14.6%の延滞利子が課されます。
貸付利率
年0.9%
なお、利子は貸付時と6ヶ月毎の返済時に6ヶ月分の前払いをする事になります。
担保・保証人
いずれも不要
福祉対応貸付け
福祉対応貸付けは、契約者又は契約者と同居する親族の福祉向上に必要な住宅改造資金や福祉機器などを購入する為の資金を貸し付ける制度です。
貸付要件
福祉対応貸付けを受ける事が出来るのは、一般貸付の資格を取得している契約者の内、以下に該当する方です。
- 契約者又は同居の親族が65歳以上の高齢者又は身体障害者
- 高齢者又は身体障害者の身体機能低下に対応する為の住居や事業所の改築等(※1)・福祉機器(※2)の購入等計画が有る
※1:新築を含み、住宅金融支援機構のバリアフリー基準を満たす必要が有ります。
※2:日本工業規格JIS:T0101(義肢、装具部門)、同T0102(リハビリテーション機器部門)に該当するもの。但し、リースは対象外。
借入の手続
福祉対応貸付けを受ける場合は、小規模共済融資課に申込が必要です。申込内容の審査を経て、貸付決定となると中小機構から「貸付決定通知書」が送られて来ます。
通知書が届いたら必要書類等を持って、商工組合中央金庫(商工中金)の本店又は支店に行きましょう。そこで実際にお金を借りる事が出来ます。
貸付限度額
掛金の範囲内(納付月数によって、掛金の7〜9割)
貸付額
50万円〜1,000万円
参考:他の契約者貸付を併せて借りる場合、2,000万円が上限となります。
貸付金の使途
福祉資金
貸付期間
貸付期間は、貸付額によって以下の様に異なります。
- 貸付額が500万円以下・・・36ヶ月
- 貸付額が505万円以上・・・60ヶ月
償還方法
6ヶ月毎の元金均等割賦償還です。
注:返済期限に遅れると、期日以降は年14.6%の延滞利子が課されます。
貸付利率
年0.9%
なお、利子は貸付時と6ヶ月毎の返済時に6ヶ月分の前払いをする事になります。
担保・保証人
いずれも不要
申込可能期間
改築や福祉機器の購入予定日前6ヶ月から申込が出来ます。
創業転換時・新規事業展開等貸付け
創業転換時・新規事業展開等貸付けは、新規開業や転業、新事業展開時に必要な資金を契約者に貸し付ける制度です。
貸付の要件
事業承継貸付けを受ける事が出来るのは、一般貸付の資格を取得している契約者の内、商工会や商工会議所、中小企業団体中央会等の団体から以下の確認を受けた方です。
- 【創業・転業】共済事由又は準共済事由が生じている、又は生じることが確実と認められる
- 【創業・転業】新規開業・転業を行う意思を持っている
- 【創業・転業】新規開業・転業後も小規模企業者である
- 【創業・転業】共済金等を請求せずに、新規開業・転業後に再び共済契約者となり、前後の共済契約について掛金納付月数を通算する
- 【新規事業展開】現在の事業に加え、新たな事業分野に進出(※1)する意思を持っている
- 【新規事業展開】契約者(会社等の役員の場合を除きます。)の後継者(※2)が、新たに事業を開始する意思を持っている
- 【新規事業展開】後継者が現在の事業に加え、新たな事業の分野に進出する意思を持っている
※1:日本標準産業分類の細分類において現事業と異なる業種を新たに行うこと
※2:契約者の事業を承継する予定の者(父母・祖父母など、後継者といい難い者は除く)
なお、以下の場合、借主は期限の利益を喪失し、貸付金を直ちに返済しなければならなくなるので注意が必要です。
- 【創業・転業】貸付を受けたにも関わらず共済事由発生後1年以内に創業・転業をしなかった
- 【創業・転業】新たに共済契約を締結したにも関わらず共済事由等の発生日から1年以内に掛金納付月数の通算をしなかった
- 【創業・転業】創業・転業のため共済事由等の発生を見込んで創業転業時貸付けを受けたにも関わらず、6ヶ月以内にその共済事由等が発生しなかった
- 【新規事業展開】予定日までに多角化や開業をしなかった
借入の手続
創業転業時・新規事業展開等貸付けを受ける場合、小規模共済融資課への申込が必要です。申込内容の審査を経て、貸付決定となると中小機構から「貸付決定通知書」が送られて来ます。
通知書が届いたら必要書類等を持って、商工組合中央金庫(商工中金)の本店又は支店に行きましょう。そこで実際にお金を借りる事が出来ます。
貸付限度額
掛金の範囲内(納付月数によって、掛金の7〜9割)
貸付額
50万円〜1,000万円
参考:他の契約者貸付を併せて借りる場合、2,000万円が上限となります。
貸付金の使途
事業資金(運転資金・設備資金)、事業関連資金
貸付期間
貸付期間は、貸付額によって以下の様に異なります。
- 貸付額が500万円以下・・・36ヶ月
- 貸付額が505万円以上・・・60ヶ月
償還方法
6ヶ月毎の元金均等割賦償還です。
注:返済期限に遅れると、期日以降は年14.6%の延滞利子が課されます。
貸付利率
年0.9%
なお、利子は貸付時と6ヶ月毎の返済時に6ヶ月分の前払いをする事になります。
担保・保証人
いずれも不要
申込可能期間
創業・転業の場合は、事由が発生してから1年以内(※)又は事由発生予告日前6ヶ月から、新規事業展開等の場合は、事業の多角化又は新規事業開始等の予定日前6ヶ月から申込が出来ます。
※:通算の申出日(再び共済契約者となり掛金納付月数の通算を申し出た日)まで
事業承継貸付け
事業承継貸付けは、事業承継時に必要となる資金(事業用資産の購入資金や株式等の取得資金)を契約者に貸付ける制度です。
貸付の要件
事業承継貸付けを受ける事が出来るのは、一般貸付の資格を取得している契約者の内、商工会や商工会議所、中小企業団体中央会等の団体から以下の確認を受けた方です。
- 個人事業の事業資産を取得した又は取得する意思が有ること
- 会社等の役員に就任しており、その会社等の株式等を取得した又は取得する意思が有ること
注:事業承継予定日までに事業承継をしなかった場合、借主は期限の利益を喪失する為、貸付金を直ちに返済する義務が生じます。
借入の手続
事業承継貸付け制度を利用する場合は、小規模共済融資課での申込が必要です。申込内容の審査を経て、貸付決定となると中小機構から「貸付決定通知書」が送られて来ます。
通知書が届いたら必要書類等を持って、商工組合中央金庫(商工中金)の本店又は支店に行きましょう。そこで実際にお金を借りる事が出来ます。
貸付限度額
掛金の範囲内(納付月数によって、掛金の7〜9割)
貸付額
50万円〜1,000万円
参考:他の契約者貸付を併せて借りる場合、2,000万円が上限となります。
貸付金の使途
事業承継の資金
貸付期間
貸付期間は、貸付額によって以下の様に異なります。
- 貸付額が500万円以下・・・36ヶ月
- 貸付額が505万円以上・・・60ヶ月
償還方法
6ヶ月毎の元金均等割賦償還です。
注:返済期限に遅れると、期日以降は年14.6%の延滞利子が課されます。
貸付利率
年0.9%
なお、利子は貸付時と6ヶ月毎の返済時に6ヶ月分の前払いをする事になります。
担保・保証人
いずれも不要
廃業準備貸付け
廃業準備貸付けは、個人事業主が事業を廃止するか会社を解散する際に、手続を円滑に進める為に必要な資金を貸し付ける制度です。
貸付の要件
廃業準備貸付を受ける事が出来るのは、一般貸付の資格を取得している契約者の内、中小機構に対して1年以内に以下の計画を実施する旨申告し確認を受けた方です。
- 【個人事業主】廃業届の提出計画(複数の事業が有る場合は全ての事業)
- 【会社役員】共済加入に関わる法人の解散計画
注:予定日までに廃業や解散をしなかった場合、借主は期限の利益を喪失する為、貸付金を直ちに返済する義務が生じます。
借入の手続
廃業準備貸付け制度を利用する場合は、小規模共済融資課での申込が必要です。申込内容の審査を経て、貸付決定となると中小機構から「貸付決定通知書」が送られて来ます。
通知書が届いたら必要書類等を持って、商工組合中央金庫(商工中金)の本店又は支店に行きましょう。そこで実際にお金を借りる事が出来ます。
貸付限度額
掛金の範囲内(納付月数によって、掛金の7〜9割)
貸付額
50万円〜1,000万円
参考:他の契約者貸付を併せて借りる場合、2,000万円が上限となります。
貸付金の使途
廃業準備の資金
貸付期間
12ヶ月
償還方法
期限一括償還です。
なお、計画した通りに廃業して共済金を請求した場合、貸付金を控除した金額が共済金として支払われる事になります。
注:共済金の請求が遅れると、償還期日以降は年14.6%の延滞利子が課されます。
貸付利率
年0.9%
なお、利子は貸付を受ける際の一括前払いとなっているので、貸付金額から利子分を引いた金額が振込まれます。
担保・保証人
いずれも不要です。
経営セーフティ共済の貸付制度は「共済金」と「一時貸付金」の2種類!
経営セーフティ共済の貸付制度には、以下の2種類が有ります。
- 共済金 ・・・取引先の事業者が倒産し、売掛金債権等の回収が困難となった場合の貸付
- 一時貸付金・・・臨時に事業資金が必要となった場合の貸付
以下で、それぞれの制度について見ていきましょう。
共済金
共済金は、取引先事業者が倒産して売掛金債権等が回収出来そうにない場合に貸付を受けるものです。
以下で、条件や共済金の貸付を受ける方法などを見ていきましょう。
共済金の条件である「倒産」とは?
共済金の貸付を受ける為の条件である「倒産」とは、以下の様な状態になった事をいいます。なお、「夜逃げ」によって取引先と連絡が取れなくなった様な場合は、倒産には該当しません。
取引先の状態 | 説明 | 倒産したと扱う日 |
---|---|---|
法的整理 | 破産手続開始、再生手続開始、更生手続開始、特別清算開始の申立て | 申立日 |
取引停止処分 | 手形交換所に参加する金融機関による取引停止処分 | 取引停止処分日 |
私的整理 | 債務整理の委託を受けた弁護士又は認定司法書士(※1)による、共済契約者に対する支払いを停止する旨の通知 | 通知日 |
災害による不渡り | 甚大な災害の発生による、手形等の不渡り | 当該手形等の手形交換日または呈示日 |
特定非常災害による支払不能 | 特定非常災害(※2)による代表者の死亡等の際に、弁護士又は認定司法書士によってされる、共済契約者に対し支払いを停止する旨の通知 | 通知日 |
※2:「特定非常災害の被害者の権利利益の保全等を図るための特別措置に関する法律」に基づいて指定する大規模な災害
共済金の貸付対象となる「売掛金債権等」とは?
共済金の貸付を受けるには、取引先業者の倒産によって「売掛金債権等」が回収出来なくなる必要が有りますが、この売掛金債権等とは以下のものを指しています。
- 売掛金債権
- 前渡金返還請求権
従って、貸付金や融通手形、不動産の賃貸料などは共済金貸付の対象とはなりません。また、倒産した事業者に対する買掛金等の債務が同時に有る場合は、それを相殺して被害額を計算する事になります。
共済金の貸付が受けられない場合とは?
取引先が倒産して売掛金債権等が回収不能になったとしても、以下の様な場合には共済金の貸付を受ける事は出来ないので、注意が必要です。
- 共済加入後6ヶ月未満で取引先事業者が倒産した
- 取引先事業者の倒産までに6ヶ月分以上の掛金を納付していない
- 取引先事業者の倒産から6ヶ月以上経過してから貸付の請求をした
- 貸付額が少額(50万円未満かつ契約者の月間総取引額の20%相当額未満)
- 貸付請求をする時点で契約者が中小企業者ではなくなっている
- 貸付請求をした契約者が倒産又は倒産に準ずる状況にある
- 売掛金債権等の取得や回収が困難になった事に関して、契約者に悪意又は重過失がある
- 倒産した取引先事業者との取引額や代金支払方法などが確認出来ない
共済金の借入をする際の必要書類や融資までの期間
共済金の借入をするには、以下の書類が必要となります。なお、請求書等は登録取扱機関の窓口で貰うか、資料請求フォーム若しくはFAXで請求しましょう。
- 共済金貸付請求書
- 倒産した取引先事業者との取引実績表
- 償還金預金口座振替払に関する申出書
- 掛金納付額証明願 ※1
- 償還金納付額証明願 ※1
- (取引停止処分の場合)証明願
- (特定非常災害による支払不能の場合)特定非常災害により被災した取引先事業者に関する報告書
- 【法人の場合】発行後3ヶ月以内の登記事項証明書原本(法人登記簿)
- 【個人の場合】発行後3ヶ月以内の住民票原本
- 売掛金元帳の写し
- 未決済手形・小切手の写し
- 取引先事業者の法的倒産の事実が確認出来る書類
- 取引関係が確認出来る帳票類の写し ※2
- (私的整理の場合)弁護士等からの支払停止通知の写し
- 共済契約契約締結証書(登録取扱機関に提示のみ)
※1:直近2ヶ月に払った掛金を借入希望額に含める場合は掛金納付額証明願を、既に共済金の借入れがあり直近2ヶ月に返済した金額を除かなければ、合計が8,000万円を超える場合は、償還金納付額証明願を金融機関に提出して確認印を貰う必要が有ります。
※2:受取手形期日帳・買掛帳・物品受領書・荷送状・売買契約書・工事請負契約書・確定申告書一式など。業種や業態によって異なるので、詳細は登録取扱機関等に確認が必要。
書類の準備が出来たら、共済金の受取・返済に使用する口座の有る金融機関に行って「償還金預金口座振替払に関する申出書」に確認印を貰いましょう。
また、「共済金貸付請求書」や「倒産した取引先事業者との取引実績表」、「償還金預金口座振替払に関する申出書」については添付書類とセットにして登録取扱機関に提出し、確認印を貰わなければなりません。
書類に不備がなければ、登録取扱機関が中小機構に書類を提出します。特に問題が無ければ約2週間程度で審査が終わり、以下の書類が送られて来るでしょう。
- 共済金貸付決定通知書
- 共済金貸付契約証書
- 送金通知書
送られて来た貸付契約証書に必要事項を記入し、発行後3ヶ月以内の印鑑証明書と共済契約締結証書・収入印紙を持って指定の金融機関に持って行きましょう。金融機関で手続が終わると、指定口座に振込まれます。
貸付限度額
共済金の貸付限度額は、回収困難となった売掛金債権等の額と、今までに支払った掛金総額の10倍相当額とのいずれか小さい方の額で、最大で8,000万円です。
例えば、掛金総額が300万円で被害総額が2,500万円の場合、掛金総額の10倍は3,000万円なので上限は2,500万円となります。
貸付額
貸付額は、5万円単位で最低50万円からです。
返済期間
返済期間は、受けた貸付の額に応じて以下の様に異なります。
貸付金額 | 返済期間 (据置期間6ヶ月を含む) |
---|---|
5,000万円未満 | 5年 |
5,000万円以上6,500万円未満 | 6年 |
6,500万円以上8,000万円以下 | 7年 |
返済方法
6ヶ月間の据置期間が経過した後、以下の期間で均等分割し毎月返済する事になります。
返済期間 | 分割回数 |
---|---|
5年 | 54回 |
6年 | 66回 |
7年 | 78回 |
なお、返済期限までに返済が出来なかった場合、年14.6%の違約金が課されるので注意が必要です。
口座の残高不足等で引落しが出来なかった場合は、当月中であれば中小機構の指定する口座(※)へ直接入金する事が可能ですが、当月中の入金が難しい場合は翌月に2ヶ月分の引落しがされます。
※:中小機構の「倒産防止共済貸付管理課」に問い合わせれば教えてもらう事が出来ます。
未払月数が4ヶ月になると掛金が取り崩されて返済金に充当され、さらに5ヶ月になると貸付残高の一括返済が必要となるので特に注意が必要です。
貸付利率
共済金の貸付は無利子です。但し、貸付を受けた時に貸付額の10分の1相当額が、今までに払込んだ掛金から控除される事になります。
つまり、解約時に受け取る事の出来る金額が貸付額の10分の1相当額分減ってしまうという事です。従って、表面上は無利子とされていますが、実質的には利息を払っているのと変わりませんね・・・。
担保・保証人
いずれも不要です。
一時貸付金
経営セーフティ共済では、共済金の貸付以外にも随時事業資金としての貸付(一時貸付金)を受ける事が出来ます。
以下で、一時貸付金の条件や手続などを見ていきましょう。
一時貸付金申込時の必要書類や融資までの期間
一時貸付金の制度を利用するには、以下の書類が必要です。
- 一時貸付金貸付請求書(記入例) ※
- 金銭消費貸借契約証書 ※
- 印鑑証明書(発行後3ヶ月以内)
- 収入印紙
※:資料請求フォーム若しくはFAXで請求しましょう。なお、これらの資料は一緒に綴じ込まれています。
必要書類が用意出来たら、振込をして欲しい口座の有る金融機関に一時貸付金貸付請求書を提出し、確認印を貰いましょう。その後、登録取扱機関は通さず直接中小機構へ提出します。宛先は以下の通り。
中小企業基盤整備機構 倒産防止共済貸付課 一時貸付係
審査は、書類不備があったりや年末・年度末でない限りは、通常約10日〜2週間で終わります。審査が終わると、すぐに指定の口座に振込まれます。
振り込み完了後、「金銭消費貸借契約証書(借主控)」が送られて来るので、捨てずに保管しておきましょう。
貸付限度額
一時貸付金の貸付限度額は、機構解約の場合に支払われる事になる解約手当金の95%で、最大760万円までです。
貸付限度額を表にすると、以下の様な感じとなります。
掛金納付月数 | 貸付限度額 |
---|---|
1〜11ヶ月 | 0円 |
12〜23ヶ月 | 掛金総額×75%×95% |
24〜29ヶ月 | 掛金総額×80%×95% |
30〜35ヶ月 | 掛金総額×85%×95% |
36〜39ヶ月 | 掛金総額×90%×95% |
40ヶ月以上 | 掛金総額×95%×95% |
掛金総額が800万円の場合 | 760万円(800万円×100%×95%) |
参考:平成23年9月末時点での掛金総額が320万円だった共済契約者は、掛金総額が引き続き320万円のままで、月額を85,000円以上にしていない限り、貸付限度額は300万円です。
貸付額
貸付額は、5万円単位で最低30万円からです。
貸付金の使途
事業資金であれば、運転資金・設備資金のどちらでも構いません。
返済期間
1年です。
なお、返済期日が来る前に一括返済をしたい場合は、共済相談室(※)に問い合わせる様にしましょう。
※:TEL050−5541−7171、受付時間は平日の午前9時〜午後6時
返済方法
期限一括償還です。
返済期日までに一時金の返済が出来ないと、年14.6%の違約金が課せられるので注意が必要です。また、返済期日から5ヶ月経っても返済を出来ない場合、過去に支払った掛金が取り崩され返済に充てられます。
貸付利率
貸付利率は金融情勢によって変動し、平成23年4月1日以降の一時貸付は「年0.9%」となっています。
なお、利息は貸付時に一括前払いです。貸付金額から利息分を差し引いた金額が口座に振込まれる事になります。
担保・保証人
いずれも不要です。
まとめ
いかがでしたか?節税目的ばかりに目がいってしまいそうな小規模企業共済と経営セーフティ共済ですが、便利な貸付制度が色々用意されている事が分かりましたね。
銀行や信用金庫などよりも簡単な手続で素早くお金を借りる事が出来るので、必要に応じて貸付制度を利用する様にしましょう。
最後にそれぞれの制度をまとめて表にしておきます。参考にして下さい(小規模企業共済の特別貸付けはひとまとめにしています。)
一般貸付け | 特別貸付け | 共済金 | 一時貸付金 | |
---|---|---|---|---|
貸付限度額 | 2,000万円 | 原則1,000万円 | 8,000万円 | 760万円 |
貸付額 | 10万円以上 | 50万円以上 | 50万円以上 | 30万円以上 |
資金使途 | 事業資金(運転・設備) 事業関連資金 | 事業資金等 | 特に無し | 事業資金(運転・設備) |
貸付期間 | 貸付額によって6・12・24・36・60ヶ月 | 貸付額によって36・60ヶ月 | 貸付額によって5〜7年(6ヶ月の据置期間を含む) | 1年 |
償還方法 | 貸付期間によって期限一括償還・6ヶ月毎の元金均等割賦償還 | 6ヶ月毎の元金均等割賦償還 | 均等分割償還 | 期限一括償還 |
利率 | 1.50% | 0.90% | 無利子 | 0.90% |
利子支払方法 | 【期限一括償還】 貸付時に一括前払い 【割賦償還】 貸付時及び償還時に6ヶ月分前払い | 貸付時及び償還時に6ヶ月分前払い | − | 貸付時一括前払い |
延滞利子 | 年14.6% | 年14.6% | 年14.6% | 年14.6% |
担保・保証人 | 不要 | 不要 | 不要 | 不要 |
借入申込窓口 | 登録代理店 | 中小機構 | 登録取扱機関 | 中小機構 |
補足:いずれの貸付制度を利用する場合でも、申込上で「反社会的勢力に該当しない事及び、現在かつ将来にわたってそれに類する行為を行わない事」を申告しなければなりません。