家から顔を出す女性

「いい歳になってきたし、今のマンションを売ってローンを組んで一戸建てを建てるか。」

「マイホームは売っても利益が3,000万円までなら税金がかからないっていうし、住宅ローンを組めば所得税も安くなるからお得!」

「けど、住宅ローン控除とマイホーム3,000万円の特別控除は併用出来ないってホント!?」

この流れで新しく家を購入する際に唖然とした方もきっと多いでしょう。

住宅ローン控除とマイホーム3,000万円の特別控除は本当に併用出来ないのでしょうか?

結論を先にいっておくと、「基本的にマイホームを売った際の3,000万円の特別控除と住宅ローン控除は併用出来ないけど、併用して売った時買った時の両方で税金を安くするテクニックも有る!」です。

ちょっと謎掛けみたいで分かりにくいですね。本文で詳しくみていきます。

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マイホーム3,000万円の特別控除(特例)とは?〜内容や要件を簡単におさらい〜

喜ぶ女性

マイホームに限らず不動産を売ったときは、原則として以下の計算によって出た所得の15.315%を所得税、5%を住民税として納税しなければなりません(租税特別措置法第31条)。

収入金額ー(取得費+譲渡費用)=課税譲渡所得金額

:購入代金や建築代金の合計額から「減価償却費相当額」を差し引いた金額のこと。

参考:不動産の所有期間が5年以下だった場合は、所得の39.63%(所得税30.63%+住民税9%)。

しかし、そんなたくさん課税してしまうと、みんな新しい家に引っ越そうとしなくなってしまうので、マイホームについては「売ったときに出た所得から最大3,000万円を控除する」、という特例が有ります(租税特別措置法第35条)。

マイホームを売って3,000万円超の利益が出るなんて事は、バブル期でもない限りそう簡単に起きません。従って、実質的にマイホームを売っても所得税や住民税はかからないのです。

一般的にマイホームを売っても税金がかからない、と言われているのはこの規定によるものという訳ですね。

適用要件は以下の通り。

①自分が住んでいる家を売るか、家とセットでその敷地や借地権を売る。なお、以前に住んでいた家屋や敷地等の場合には、住まなくなった日から3年目を経過する日の属する年の12月31日までに売ること

②売った年の前年及び前々年にこの特例の適用を受けていない。

③マイホームの買換えやマイホームの交換の特例若しくは、マイホームの譲渡損失についての損益通算及び繰越控除の特例の適用を受けていない。

④売った家屋や敷地について、収用等の場合の特別控除など他の特例の適用を受けていない。

⑤災害によって滅失した家の場合、その敷地を住まなくなった日から3年目の年の12月31日までに売る。

⑥売主と買主が、親子や夫婦など特別な関係でない。

以上の条件を満たしていれば、マイホームの譲渡に関しては所得から3,000万円を控除する事ができます。

注:「マイホームを売った際の所得が3,000万円以下だから確定申告はしなくていい」というのは間違いです。この特例を受ける場合は、確定申告をしなければなりません。確定申告をしなかったら、原則どおり課税されるので注意が必要です!
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住宅ローン控除とマイホーム3,000万円の特別控除は原則併用できない!〜どちらがお得か考えて使おう〜

家の模型

マイホームを売った場合、上述のマイホーム3,000万円の特別控除が使えます。そして、新しく家をローンで購入したときの優遇制度として住宅ローン控除も有りますよね。

この2つを併用すれば、売った時も買った時も税金が安くなって非常にお得です。

しかし、そう簡単にはいきません!

基本的に両者の規定を併用する事は出来ない様になっているのです。

参考:マイホームの3,000万円特別控除と、マイホームに10年超住んでいた場合に受けられる軽減税率(参照元:国税庁)とは、問題なく併用可能です。

以下で、住宅ローン控除を使う際の要件を見てみましょう(租税特別措置法第41条)。

①新築又は取得の日から6か月以内に住み始め、適用を受ける各年の12月31日まで引き続き住んでいる。

②住宅ローン控除を受ける年分の合計所得金額が、3千万円以下。

③新築又は取得をした住宅の床面積が50平方メートル以上、かつ、床面積の2分の1以上の部分が自分の居住用。

④住宅ローンの返済期間は10年以上。

⑤住み始めた年とその前後の2年ずつの5年間に、居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例などの適用を受けていない。

重要なのは太字にした⑤の要件ですね。住み始めた年とその前後2年間に居住用財産(マイホーム)関連の特例を受けている場合は、新しい家で住宅ローン控除を受ける事が出来ません。そして、この特例にはマイホームの3,000万円特別控除も含まれています。

従って、住んでいたマンションを売ってマイホームの3,000万円特別控除を使い、残ったお金で新しい家の頭金を支払い残額に対してローンを組み住宅ローン控除も使う、という事はできません。

「どちらの制度を使う方が自分にとって得なのか」をよく考えて決める必要があるのです。

選択肢としては、以下の2つですね。

  • 売った家の税金は普通に払い、新しく買った家の住宅ローン控除を使って買った年以降の税金を減らす。
  • 売った家に対して3,000万円の特別控除を使って税金をゼロにし、新しく買った家については住宅ローン控除を使わない。

家と電卓

では、どっちを選べばいいのでしょうか、試しに年収500万円の方が2017年にマイホームを売買したケースで、簡単な計算例を見てみましょう。

前に住んでいた家の売却時と新しく購入した家のデータは、以下の通りとします。

◆前に住んでいた家の売却◆

項目金額
売却金額
(①)
2,500万円
取得費用
(②)
1,900万円
譲渡費用
(③)
100万円
売却時の残債
(④)
1,300万円
売却によって残った資金
(⑤=①−③−④)
1,100万円
:取得費用は減価償却後の金額。

◆新しく購入した家◆

項目金額
購入金額
(①)
4,000万円
自己資金
(②)
300万円
売却によって残った資金
(③)
1,100万円
購入時のローン額
(④=①−②−③)
2,600万円

売った家の譲渡所得は、500万円(=2,500万円−1,900万円−100万円)なので、マイホーム3,000万円の特別控除を使う場合は、家を売った事による所得税・住民税は0円です。

一方で、住宅ローン控除を使って特別控除を使わなかった場合の税金は101万5,700円(=500万円×20.315%)です。特例を使うか使わなかったかで100万円もの税金の差が発生しますね。

では特例を使った方がいいのでしょうか、それとも使わずに住宅ローン控除を使った方がいいのでしょうか?それは、住宅ローン控除でどれだけの所得税の減税が受けられるかによりますね。

新しく購入した家は2,500万円のローン(35年)を組んでいるので、購入後10年間にわたって毎年残債の1%(40万円が限度)の住宅ローン控除を受ける事ができます。

この住宅ローン控除の総額が、3,000万円の特別控除による減税分を上回れば、住宅ローン控除を受けた方が得ですね。

年収500万円の方が2,500万円の住宅ローン(変動金利0.6%)を組んだ場合、総額でおおよそ213万円程度の住宅ローン控除を受ける事が出来るので、3,000万円の特別控除による減税分よりもお得です。

従って、今回の様なケースでは3,000万円の特別控除ではなく、住宅ローン控除を選んだ方が得という事になります。

どちらを選べばいいかはケースバイケースなので、購入時にシミュレーションをしっかりとする様にしましょうね。住宅ローン控除は税制もコロコロ変わりますし。

実は住宅ローン控除とマイホーム3,000万円特別控除は併用できる!?そのテクニックを紹介!

納得する女性

上で、「住宅ローン控除とマイホーム3,000万円特別控除は併用できない」と書きましたが、実は併用する方法も有ります

ただし、いつでも誰でも併用できるという訳ではないので、戦略的な売買が必要です。以下で併用できる2パターンを見てみましょう。

①先に新しく家を買って引っ越し、後で前の家を売る場合

まずは、先に次に住む家を購入し、後になって前住んでいた家を売るケースです。

マイホーム3,000万円の特別控除には、住まなくなってから売るまでの期間要件が定められています。おさらいですが、ここでは条文もみておきましょう。

居住用家屋で当該個人の居住の用に供されなくなつたものの譲渡を、これらの居住用家屋が当該個人の居住の用に供されなくなつた日から同日以後三年を経過する日の属する年の十二月三十一日までの間にした場合

「住まなくなった日から3年後の年末(例:平成28年3月10日に引っ越した場合は平成31年12月31日)まで」に家を売ればマイホーム3,000万円の特別控除を使う事が出来ます。

そして、住宅ローン控除を使う場合には「新しく家に住み始めた年の前後合計5年間の間に、マイホーム3,000万円特別控除を利用していない事」、という要件が有りましたよね。

この2つの条件を平成30年4月1日に新しい家をローンで購入して引っ越ししたケースでみましょう。

電卓を持つ女性

まず、平成30年にローンで家を購入しているので、平成30年分から住宅ローン控除を受ける事が出来ます。

ただし、住宅ローン控除を受ける選択した時点で、そこから翌年以降2年間はマイホーム3,000万円の特別控除を受ける事は出来ません。つまり、家を買った平成30年と平成31・32年ですね。

一方で、マイホーム3,000万円の特別控除は引っ越した日から3年目の12月31日までしか利用出来ないので、今回のケースでは平成33年12月31日が適用期限です。

と、ここで平成33年がポイントになります。住宅ローン控除側の制限は平成30年〜平成32年で、マイホーム3,000万円の特別控除が使えるのは平成33年12月末までです。

という事は、両方の制限に引っかからない年が1年だけありますよね。そう、平成33年ですね。

この1年間の間に以前住んでいた家を売った場合に限り、マイホーム3,000万円の特別控除と住宅ローン控除の併用ができるのです!

:不動産を譲渡した日は原則「引渡しの日」ですが、「売買契約の日」を譲渡の日にして申告しても構いません(参照元:国税庁「タックスアンサーNo.3102 譲渡所得の申告期限」)。従って、住まなくなった日から3年目の年末までに売買契約を済ませ、4年目以降に引渡しをしたとしても、特例の適用を受ける事自体は可能です。

図解すると以下の様な感じ。

併用の可否

平成32年でも平成34年でもダメで、平成33年に売った場合のみ併用可能です。これはある意味法の抜け穴みたいなものですよね、別に悪いことをしている訳ではないので特に条件を満たしている限りは問題はありません。

とはいっても、多くの方は売った家の代金を新しく買う家の頭金に充当するでしょうから、現実的には併用できる方というのはそうそういないかもしれないですね・・・。

たまたま運良く併用出来るケースだった場合、知らなければ適用漏れで無駄に税金を払ってしまいかねないので、こういったケースもあるという事は知っておきましょう。

住まなくなった家をどう使っていたかは、3,000万円の特別控除の適用要件となっていないので、引っ越し後誰かに賃貸していても問題ありません。

②先に前に住んでいた家を売り、後で新しく家を購入する場合

次に、住んでいた家を売った後で、新しく家を購入するケースです。

提案する女性

このケースでは、まず先に住んでいた家を売ってマイホーム3,000万円の特別控除を受けます。

そうすると、住宅ローン控除の適用要件に引っかかる事になるので、以降2年間は住宅ローン控除を受ける事が出来ません。

例えば、平成30年に家を売って特別控除を受けたのであれば、平成31年と平成32年は住宅ローン控除は受ける事ができず、平成33年以降になってから住宅ローン控除が受けられる様になります。

そこで、家を売ってから平成33年になるまでの間は、敢えて安い賃貸住宅等に住み、要件を満たす様になってから新たにローンで家を購入するのです。

そうすれば、両方の減税制度を利用する事が出来ます(同じ年に両方の制度を使う訳ではないので、厳密に併用とは言えないかもしれないですけどね・・・)。

そのためだけに、わざわざ2年程度賃貸物件に住む人がいるのか、という点はさておき、この様な方法を採る事で減税のメリットを活用する事は可能なのです。

まとめ

住宅ローン控除とマイホーム3,000万円の特別控除が併用できるか、という点について見てきました。一般的に、前に住んでいた家を売ったお金を新しい家の購入資金に充てる方が多いでしょうから、通常はこれらの控除を併用する事は出来ません。

しかし、前の家に住まなくなってから3年目に売ったり、3,000万円の特別控除を使ってから3年目に新たに住宅を購入すれば、両方の控除を利用する事が出来ます。

家は人生でもっとも高い買い物になる方が多いです。それに伴う税金も大きいので上手に売買をしていきたいですね。

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