2016年1月からマイナンバー制度が始まり、今後どの様に変わっていくのか期待している方や不安に思っている方など様々でしょう。
ところで、マイナンバー制度の導入に伴いFX業者でも口座開設時にマイナンバーの提出が必要となりました。
マイナンバーとFXは、一見すると何の関係も無さそうですが、なぜ提出が必要なのでしょうか。また、どのFX業者でもマイナンバーの提出が必要なのでしょうか。
ここでは、マイナンバー制度の概要やFXとマイナンバーの関係について見ていきましょう。まずはマイナンバー制度について簡単な概要から見ていきます。
マイナンバー制度の概要
マイナンバー制度の正式名称は「社会保障・税番号制度」といい、日本に住民票の有る全ての人(外国人も含む)を12桁の番号で管理しようというものです。1960年代後半から言われて来た「国民総背番号制」がやっと実現したという訳ですね。
参考:法人には「法人番号」という13桁の数字が付与されています。マイナンバーと違い機密性が低いので、国税庁の法人番号公表サイトにて誰でもいつでも検索・閲覧する事が可能です。
マイナンバー(個人番号)自体は、2015年の10月から対象者に随時通知され、2016年1月から実際に運用が開始されています。最初の通知では「通知カード」が届きますが、後日申請する事で公的な身分証明書として使える「マイナンバーカード」が入手出来ますよ。
参考:2017年から政府が運営するオンラインサービスである「マイナポータル」が随時サービスの提供を開始する予定です。これにより、子育てに関する行政手続が簡便化されたり、公金決済が出来たりと、様々な場面での利便性向上が期待されています。
なお、基本的に一度与えられたマイナンバーは一生変わる事が有りません(紛失・盗難により漏洩し、悪用される可能性が有る場合は例外的に変更可能)。
今はまだ利用する場面が少ないので、自分のマイナンバーを覚えている方は殆どいないでしょうが、将来的には自分の携帯番号の様にスラスラと言える様になるときが来るでしょうね。
マイナンバー制度の目的
マイナンバー制度では、「社会保障・税・災害対策」の分野において、以下の3つを達成する事が目的として掲げられています。
- 公平・公正な社会の実現
- 国民の利便性の向上
- 行政の効率化
要は、「番号で個人を一括管理する事で、給付金等の不正受給を防止して、面倒な行政の手続を簡素化し(印鑑証明書等がコンビニでも取得可能!)、役所での業務効率化を図りましょう!」というものです。
総務省から、今後のマイナンバーカードの活用についてロードマップが公開されているので、興味が有る方は見てみて下さい。結構壮大な計画が練られている様ですよ。
なお、よくマイナンバーは「脱税している人を見つけるのが目的!」と言われますよね。確かに、マイナンバー制度がうまく機能すれば保有している財産の情報などを簡単に把握する事が出来る様になるでしょう。
しかし、税務署は元々KSK(国税総合管理システム)を駆使して、納税者の財産や所得の状況などを調査・管理しています。
もちろん、マイナンバーによって脱税している人を見つける作業が効率的になる可能性は有りますが、そこは純粋に上記の目的を達成しようとしていると考えていいんじゃないかな、と思います。
FX業者にマイナンバーを提出する理由
マイナンバー制度が導入されて以来、FX業者で口座を開設しようとするとマイナンバーの提出を求められる様になりました。
「何でFX業者がマイナンバーを集めるんだ!」って気になる方も多いでしょう。
以下で簡単に理由を見てみましょう。
FX業者は、毎年税務署に対して顧客の年間取引状況を「先物取引に関する支払調書」として提出しています。これは、過去に多額の脱税が頻繁に発生した事が原因ですね。業者に取引状況の報告をさせる事で、確定申告をしてない納税者を捕捉しようという訳です。
⇒【課税当局は見ている!】支払調書や財産調書などの提出義務まとめ
そして、この支払調書にはマイナンバーを記載しなければならないのです(所得税法第225条第1項13号)。実際の支払調書を見てみると、以下の様な感じになっています。マイナンバーを記載するのは赤枠で囲んだところですね。
FX業者はあらかじめ顧客のマイナンバーを知っている訳では無いですし、マイナンバーは特定個人情報(※)に該当し、法律によって扱いが厳しく規定されているので、勝手に調べる事も出来ません。
※:マイナンバーを含む個人情報のこと。(行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律(マイナンバー法)第2条第8号)
そこで、FX業者を利用している方は業者の指示に従って、マイナンバーを提出することになるのです。
なお、マイナンバーを目的外利用する事は固く禁じられており、違反すると罰則が課される事になるので、FX業者も扱いにはピリピリとしています。従って、FX業者にマイナンバーを提出したからといって、悪用されたり漏洩したりといった心配は不要でしょう。
FX業者毎のマイナンバー対応状況(口座開設の申込時)や提出方法
ここでは、主要なFX業者のマイナンバー対応状況について見てみましょう。
まず、2016年1月1日以降に新しくFXの口座を開設する方は「口座開設(申込)時」に、2015年12月31日までにFXの口座を開設した方は「2018年末まで」にマイナンバーを提出しなければならない、と番号利用整備令16条第21項で決められています。
これから口座を開設しようという方は、マイナンバーを提出する事が取引開始の条件なので問題無いですが、既に口座を持っている方は期限内にマイナンバーの提出が出来ないと取引が凍結される可能性も有るので、注意が必要ですね。
但し、口座開設時といっても、申込書を提出する時点でマイナンバーが必要な業者と、申込書を提出し口座を開設してからでもいい業者とに分かれています。この点については、後で一覧にしてまとめますね。
なお、マイナンバーを提出する場合は、以下のいずれか1点が必要です。
- 通知カード ※
- マイナンバーの記載された住民票 ※
- 個人番号(毎ナンバー)カード
※:別途、顔写真の入った身分証明書(運転免許証やパスポートのコピーなど)が必要です。顔写真の入った身分証明書が無い方は、健康保険証や印鑑証明書など、FX業者の定める証明書から2点選んで提出しなければなりません。
また、マイナンバーの提出方法としては以下の様な方法が有り、FX業者によってどの方法で提出が出来るかは異なります。
- スキャンしたマイナンバーのデータをアップロードする
- メールにマイナンバーカードの画像データを添付
- マイナンバーカードをFAXで送付
- マイナンバーカードのコピーを郵送
一番簡単で手っ取り早いのは、スキャンしたマイナンバーをPCやスマホでアップロードする方法ですね。写メでもOKなので、1分くらいでパッと手続きが終わります。
メールに添付する方法や、FAXで送る方法もそれほど時間がかからないので、アップロードに次ぐ手段と考えておくと良いでしょう。
最後に郵送で送付する方法ですが、これはあまりオススメ出来ません。というのも、送るのに時間がかかりますし、業者に届いてからも事務処理に時間がかかるので、トータルで数日から1週間程度時間を要する事になります。
といっても、郵送しか認めていない業者も有るので、その場合は仕方無いですけどね。
新しく口座を開設する際には、マイナンバーの提出が必要な事及びマイナンバーの提出にはいくつかの方法が有る事は理解出来たでしょうか。
以下で、FX業者毎にマイナンバーが口座開設の申込時に必要なのか、もしくは後日の提出でも構わないのか、マイナンバーの提出方法などを一覧にしてまとめたので、参考にして下さい
FX業者名 | マイナンバーの要否(申込時) | マイナンバーの登録方法 |
---|---|---|
![]() | 不要 | アップロード(PC・スマホ等) メール添付 FAX 郵送 |
![]() | 不要 | アップロード(PC・スマホ等) メール添付 郵送 |
![]() | 不要 | PC・スマホで登録した後日郵送 ※1 |
![]() | 不要 | アップロード(PC・スマホ等) メール添付 FAX 郵送 |
![]() | 不要 | アップロード(PC・スマホ等) メール添付 FAX ※2 郵送 ※2 |
![]() | 不要 | アップロード(PC・スマホ等) メール添付 FAX ※2 郵送 ※2 |
![]() | 必要 | アップロード(PC・スマホ等) メール添付 FAX 郵送 |
![]() | 必要 | アップロード(PC・スマホ等) メール添付 FAX 郵送 |
![]() | 必要 | アップロード(PC・スマホ等) メール添付 FAX 郵送 |
![]() | 必要 | 郵送 |
![]() | 必要 | アップロード(PC・スマホ等) |
![]() | 必要 | アップロード(PC・スマホ等) 郵送 |
![]() | 必要 | アップロード(PC・スマホ等) FAX 郵送 |
![]() | 必要 | アップロード(PC・スマホ等) メール添付 FAX 郵送 |
※2:口座開設が完了する前のみ利用可能。
業者によって、口座開設の申込時点でマイナンバーが必要となるか、口座開設後で良いのかという点では差がありますが、いずれにしても必ずマイナンバーを提出しなければなりません。
従って、どのタイミングでマイナンバーが必要になるかという点で、利用するFX業者を選ぶ意味はあまり無いと言えるでしょう。
マイナンバーの提出が不要なFX業者も有る!?
上述の通り、FX業者は支払調書にマイナンバーを記載しなければならないので、口座開設をする際にはマイナンバーの提出を求められます。
しかし、マイナンバーの提出が不要なFX業者も有るって知っていますか?
それは、海外FX業者です!
日本企業がFX業者となるためには金融庁の登録が必要(金融商品取引法第29条)ですが、金融庁に登録していない海外企業が運営しているFX業者に対しては日本の法律の規制が及ばないのです。
従って、日本の法律によって定められているマイナンバーを、海外FX業者に対して提出する必要はない、という訳ですね。
参考:金融庁に登録をしているので海外FX業者も有るので、その場合はマイナンバーの提出が必要となります。
なお、「マイナンバーが不要=脱税が出来る!」という安易な考えはやめて下さいね。
脱税は違法行為なので絶対にしてはいけないですし、マイナンバーを提出しなくてもそもそも税務署は海外への送金には常に目を光らせていますよ。
マイナンバーで勤務先に副業がバレる!?
会社勤めしている方が副業でFXをしているケースがよく有りますよね。副業が認められている場合はともかく、禁止されている場合は給料以外の収入が会社にバレない事が重要です。
今までは、基本的に確定申告をしっかりとして住民税を普通徴収にしていれば勤務先にFXの収入はバレない、というのが通説でした。
⇒FX所得は会社にバレる?orバレない?~バレない為の対策も紹介!
しかし、マイナンバーの導入によって勤務先に副業の存在がバレる可能性は上がるのでしょうか?
この点、マイナンバーをFX業者に提出する事と勤務先にFXの収入がバレる事との間に直接的な関係は有りません。
というのも、上述した様にFX業者がマイナンバーを収集するのは支払調書に記載するためです。しかし、支払調書自体は今に始まったものではなく、もともとFX業者は税務署に提出しています。
また、マイナンバーの記載された支払調書を受け取った税務署も、副業をしているかどうかを調べようとしている訳では有りません。
従って、マイナンバーを提出したからといって副業がバレるという事は無いでしょう。
まとめ
いかがでしたか?マイナンバー制度が始まった事により、FX取引をする際にはマイナンバーの提出が必要となりました。
しかし、マイナンバーはFX業者が以前から税務署に提出している支払調書に記載が必要な為に収集しているだけで、提出したからといって不利益を被る事は有りません。
また、マイナンバーを提出しても副業が勤務先にバレる事はないので、不安がる必要もないですよ。
FX業者で口座開設をする際は、いち早く取引が出来る様にマイナンバーを予め用意しておく様にしましょう。特に「通知カードを受け取ったまま一度も触ってない」という様な方は、どこにあるのか探しておいた方が良いでしょうね・・・。