「節税しつつ老後の資金準備がしたい!」
そんな自営業者やフリーランスの希望を叶えてくれるのが国民年金基金です。
サラリーマンと違って自営業者には退職金が無いので自分で老後の資金を用意しておく必要が有ります。「国民年金が有るから大丈夫では?」と思う方がいるかもしれませんが、国民年金だけでは老後の生活を満喫する事は到底出来ません。
だからといって、ただお金をタンス預金しているだけでは事業所得が減らずに毎年の税金も高くなってしまいます。出来れば節税をしながら老後の資金を貯めていきたいですよね。
そこで、ここでは老後の資金を節税しながら貯める事の出来る国民年金基金について、制度の概要や節税額などについて紹介していきます。
国民年金基金とは?〜自営業者にとっては厚生年金に代わる老後資金準備方法!〜
国民年金基金は、国民年金法の規定に基づいて運用される年金です。公的な制度ではありますが、任意加入制度なので公的年金ではなく私的年金に分類されています。
会社勤めの方は厚生年金によって国民年金よりも多くの年金を貰う事が出来ます。
参考:さらに、会社によっては「厚生年金基金」に加入する事により、年金を3階建てにしているケースも有ります。
しかし、自営業者等(国民年金第1号被保険者)は国民年金しかもらう事が出来ないので、公的年金だけでは老後の生活が到底賄いきれません。
統計等の金額を基に考えてみましょう。(公財)生命保険文化センターによると、老後に必要な生活費は夫婦で月額平均22.0万円となっています(ゆとりある老後生活費は34.9万円)。
一方で、日本年金機構によると、夫婦が国民年金として貰う事の出来る額は平成29年時点で年間1,558,600円(779,300円×2人)です(※)。月額に直すと129,883円にしかなりません。国民年金だけだと、老後の生活費としては全然足りていない事が分かりますね。
※:夫婦がいずれも満額の年金を受け取った場合です。免除を受けたり未納の場合は減額されます。
そこで国民年金基金は、国民年金とセットになって自営業者等(国民年金第1号被保険者)の老後資金を確保する為に、平成3年に創設されたのです。
イメージとしては以下の様な感じですね。
日本人の平均寿命は伸びており、平成28年時点では男性の平均寿命は80.98歳、女性は87.14歳となっています(参照元:厚生労働省「平成28年簡易生命表の概況」)。
仕事が終わってからも長い人生が待っているので、しっかりと老後の生活資金を確保しておきたいところですね。
全国の基金を束ねる「国民年金基金連合会」とは?
国民年金基金は後述する様に「地域型」と「職能型」とに分かれますが、それらを束ねているのが国民年金基金連合会です。
国民年金基金連合会は、国民年金法第137条の2の5に基づいて年金や遺族一時金を支給する為に平成3年5月に設立され、全ての国民年金基金が連合会の会員となっています。
連合会の主な業務は、国民年金基金を束ねる他にも以下の様なものが有ります。
- 年金支給を安定的に行うために、納付された掛金を運用(給付確保事業・共同運用事業 ※)
- 事務処理の効率化及び経費削減の為の事務処理一括化(共同事務処理事業)
- その他、基金の事業に対する指導や連絡、年金制度の調査や研究等
※:年金や一時金を確保する為に、加入者が支払う掛金の1口目は基金から連合会に拠出され、まとめて資産運用される。2口目以降については、規約で共同運用の参加を定めた基金は、1口目同様に連合会に拠出してまとめて資産運用される。
また、国民年金基金だけでなく「iDeCo(個人型確定拠出年金)」の実施主体として、規約の作成や加入者資格の確認、掛金の収納等の業務も行うなど、様々な業務を行っていますよ。
国民年金基金は大きく「地域型」と「職能型」の2種類に分かれる!
国民年金基金は、各都道府県に設立されている地域型国民年金基金(例:東京都国民年金基金、大阪府国民年金基金)と、職種別に設立された25種類の職能型国民年金基金(例:歯科医師国民年金基金、公認会計士国民年金基金)とに分かれます(国民年金法第115条の2・118条の2)。
地域型は、その都道府県に住所が有る国民年金の第1号被保険者であれば加入する事が出来ますが、職能型は住所に関わらず基金毎に定められた事業や業務に従事する国民年金の第1号被保険者である事が必要です。
なお、地域型も職能型も基金が行っている事業の内容は同じで、どちらか一方にしか加入する事が出来ません。
合併予定日は平成31年(2019年)の4月1日です。従って、この日以降は今回合併に参加していない3つの職能型国民年金基金(歯科医師国民年金基金・司法書士国民年金基金・日本弁護士国民年金基金)を除いて全ての人が同じ国民年金基金に加入することになります。
国民年金基金の加入資格は?
国民年金基金は、上記の基金毎の加入制限の他にも加入条件が定められており、加入出来る方と出来ない方の区分は以下の通りとなっています。(国民年金法第127条)。
20歳〜60歳未満 | 60歳〜65歳未満 | 20歳未満or65歳以上 | |
---|---|---|---|
自営業者等 (国民年金第1号被保険者) | ○ | × | × |
サラリーマン等 (国民年金第2号被保険者) | × | × | × |
サラリーマンの妻等 (国民年金第3号被保険者) | × | × | × |
国民年金の任意加入者 (国内外問わず) | ○ | ○ | × |
なお、国民年金第1号被保険者だっとしても、国民年金の保険料を免除されている方(※)や農業者年金の被保険者は加入出来ません。
※:一部免除や学生納付特例、納付猶予も含む。但し、法定免除者が国民年金保険料免除期間納付申出書を年金事務所に提出した場合は、当該期間については加入可能。
国民年金基金に加入すると、原則脱退不可!
国民年金基金は老後の資金準備の為に加入するものですし、基金は受け取った掛金を運用している為、一度加入すると任意での脱退は出来ません。また、任意に途中で他の国民年金基金に移る事も出来ません。
これは、国民年金基金に加入する数少ないデメリットと言えるでしょう。
参考:他にも、物価スライド制に対応していないため、インフレになった際に実質的な年金額が減ってしまうというデメリットがあります。
但し、以下の場合は加入資格を喪失する事になるので、脱退となります(国民年金法第127条の3)。
- ①60歳になったとき
- ②60歳以上で加入した方が65歳になったとき
- ③国民年金の第1号被保険者でなくなったとき
- ④国民年金の任意加入被保険者でなくなったとき
- ⑤(地域型の場合)他の都道府県に転居したとき
- ⑥(職能型の場合)該当事業や業務に従事しなくなったとき
- ⑦国民年金保険料を免除されたとき(一部免除・学生納付特例・納付猶予を含む)
- ⑧農業者年金の被保険者になったとき
- ⑨加入者本人が死亡したとき
補足2:海外に転居したときは加入資格を喪失するが、国民年金の任意加入手続きを3ヶ月以内にすれば以前と同条件で加入する事が可能。
なお、加入資格を失った場合、既に支払った掛金を引き出す事は出来ず将来年金として受け取る事になります。この際、加入期間が15年未満だった場合は、国民年金基金連合会に年金の原資が移され、将来連合会から年金等の支払いがされる事になります(国民年金法第137条の2の5)。
国民年金基金の掛金について
以下では、国民年金基金の掛金に関する決まり事や支払い方法などについて見ていきましょう。
掛金月額は給付タイプや口数によって異なる!
毎月支払う掛金の額は、将来貰う年金の給付タイプ(後述します)や加入口数、性別、年齢によって異なり、自分の将来設計に合わせて自由に組み合わせて決める事が出来ます。
また、ライフスタイルや環境の変化に応じて一度決めた掛金を後で限度額の範囲内で増減する事も可能です。
性別毎の掛金月額表は以下の通り(参照元:国民年金基金パンフレット平成29年4月時点verP16〜P17)。
注:
・表中の加入時年齢は、加入した日の属する月の末日における年齢。
・性別による掛金差は1口目のみ。2口目以降は男女で掛金の差はない
1口毎の掛金の額は1歳毎&給付タイプ毎に異なっており、以下の関係が成り立っています。
- 加入時の年齢が高い>加入時の年齢が低い
- 終身年金>確定年金
- 確定年金の保証期間が長い>確定年金の保証期間が短い
また、2口目以降の掛金は1口目の掛金(終身年金)の半分となっていますよね(例:20歳0ヶ月の男性A型は1口目7,020円、2口目以降は3,510円)。
これは、将来貰える年金の月額が1口目は2万円なのに対して2口目以降が1万円だからです(35歳〜45歳の場合は、1口目の基本年金月額が1万5千円、2口目以降が5千円と3分の1になっているので掛金額も3分の1)。
なお、国民年金基金の1口目には国民年金の付加保険料の月額400円が含まれているので、国民年金基金に加入した方は以降付加保険料を納める必要はなくなります。
掛金の上限金額は68,000円以内!
確定拠出年金で拠出出来る掛金は、毎月68,000円以内です。年換算すると816,000円ですね。
なお、iDeCo(個人型確定拠出年金)に加入している場合は、その掛金も合わせて68,000円以内となるので注意が必要です。
掛金の納付は口座振替で!
毎月の掛金の納付は、加入者が指定した金融機関からの口座振替(毎月1日)によって行います。掛金対象月と引落し月の関係は以下の通り。
(参照元:国民年金基金にご加入いただいたみなさまへ)
但し、以下の金融機関は国民年金基金連合会との口座振替契約がないので、掛金納付口座として利用する事は出来ません。
- ネット銀行(楽天銀行、ジャパンネット銀行、セブン銀行、ソニー銀行、イオン銀行、住信SBIネット銀行等)
- 一部の信託銀行(野村信託銀行等)
- 外国銀行(シティバンク等)
- その他(農林中央金庫、商工組合中央金庫、みずほコーポレート銀行、新銀行東京等)
なお、クレジットカードによる掛金の納付も出来ないので、クレジットカードのポイントを貯めれるかも!?と考えていた方は諦めましょう。
参考:海外在住の方は、国民年金の保険料とセットで口座振替する事は出来ません。
前納すると割引有り!
国民年金基金の掛金を1年先の分まで前納(4月分〜翌3月分)する事ができ、前納すると掛金額が0.1ヶ月分割引されます。なお、前納の場合の掛金引落し日は6月1日。
割引額の計算式は以下の通り。
例えば、毎月上限の68,000円を納付している方の場合、1年分を前納すると6,800円{=816,000円—(68,000円×11.9)}の割引が受けられます。
1年で考えるとそれほど大した額ではないかもしれませんが、30年間払い込んだとすると割引額は204,000円にもなるので、是非活用したいところですね。
なお、掛金の割引はないのですが、翌3月までの一定期間分の掛金を一括して納付する事も可能です。
掛金が払えなかった場合、掛金の減額や後払いは可能?
掛金は原則として毎月口座から引き落とされていきますが、口座の残高が足りないと引落し不能となります。掛金の引落しが出来なかった場合、翌月に2ヶ月分まとめて口座引落しされます。
但し、2ヶ月連続で口座引落しが出来なかった場合は、掛金の払込票が郵送で届くのでそれで納付しなければなりません。また、所定の延滞金が加算される事になるので、要注意ですね。
なお、未払となっている掛金は2年まで遡って支払う事が可能です。
・国民年金の保険料が未納のまま2年経過してしまうと、その間に国民年金基金の掛金を支払っても将来の国民年金基金の年金額に反映されません。この場合、支払った国民年金基金の掛金は2年経過時点で還付されます。
・国民年金の後納制度の申込をしたとしても、国民年金基金の掛金を後納制度によって納付する事は出来ません。
掛金の支払いが苦しくなって来た場合は、掛金(口数)を減らす事が可能です。但し、1口目は加入の基本となるものなので減らせません。
また、掛金を1口目まで減額してもまだ掛金の支払いを続ける事が苦しい場合は、掛止めする事も可能ですよ。一旦掛止めすると、本人から支払い再開の申出をするまでずっと口座引落しが停止される様です。
参考:掛金を全額ストップした場合、国民年金の付加保険料だけを支払うという事は出来ません。
この点については、結構緩めですね。掛止めしたまま年金受給年齢に達した場合は、支払った期間分の年金をきちんと受け取る事が出来るので、掛け捨てにもならない様です。
1ヶ月でも掛金を納付すれば年金を受け取れるので、そういう意味では安心ですね。数ヶ月や数年で脱退した場合は、脱退一時金として返して欲しいという気持ちもありますけどね・・・。
年金の給付タイプは終身2種類(A型・B型)と確定年金5種類(Ⅰ〜Ⅴ型)の計7種類!
確定拠出年金には給付タイプが7種類あり、自分の老後の人生設計に合わせて自由に給付のタイプを選ぶ事が出来ます。加入時に将来貰える年金額も確定するので、プランニングがし易いですよ。
具体的な給付タイプは以下の通り。
タイプ | 支給時期 | 保証期間 | |
---|---|---|---|
終身年金 | A型 | 65歳支給開始 | 15年保証 |
B型 | 65歳支給開始 | 保証期間無し | |
確定年金 | Ⅰ型 | 65〜80歳支給 | 15年保証 |
Ⅱ型 | 65〜75歳支給 | 10年保証 | |
Ⅲ型 | 60〜75歳支給 | 15年保証 | |
Ⅳ型 | 60〜70歳支給 | 10年保証 | |
Ⅴ型 | 60〜65歳支給 | 5年保証 |
なお、1口目は終身年金A型かB型しか選べないですが(※)、2口目以降は上記のどれでも組み合わせて選ぶ事が可能です。
※:1口目は途中でA型⇒B型、B型⇒A型への変更が出来ません。
将来受け取る事の出来る年金額は、選んだタイプや掛金の口数によって異なり説明が複雑になってしまうので、ここでの詳細な解説は割愛しますが、さらっとで構わないので知っておいて欲しいポイントとしては2点!
まずは、「いつ加入するかによって年金額が異なる」という点ですね。これは、単純に加入が遅いと60歳までの支払い掛金合計が減るからという意味ではなく、「1口毎の年金基本額が減ってしまう」という意味です。
例えば、35歳までに加入した場合1口目の基本年金額は月額2万円ですが、35歳から50歳までに加入した場合は月額1万5千円となります。
もう1つは、「誕生月以外の月に加入した場合、年金受給時に加算額が支払われる」という点です。
誕生月に加入した場合は特に年金額の加算は無いですが、誕生月以外に加入した場合は次年齢に達するまでの月数に一定の金額を掛けた金額が将来の年金額に加算されます。
具体的な給付金額が気になる方は、国民年金基金のホームページで年金額のシュミレーションが出来るのでそちらを試してみて下さい。
参考までに、加入時の年齢が35歳0ヶ月(年収700万円)でA型に5口、Ⅰ型に5口加入した方の場合に、将来年金をいくら貰えるのかシュミレーションしてみたところ、以下の様な結果となりました。
掛金月額は67,160円で、終身受取額が84万円、15年保証のⅠ型部分が60万円と年金額としてはなかなかいい感じの結果ですね。
国民年金を繰上支給した場合、国民年金基金からも一部支給される!
国民年金(老齢基礎年金)は、原則として65歳から受け取る事が出来ますが、申請により支給開始年齢を65歳より前にする事も可能です(受給額は繰上期間に応じて減額)。
この場合、繰上受給を開始したときから、国民年金基金から貰える年金のうち付加年金に相当する部分について減額支給される事になります。
国民年金を60歳から受け取った場合の60歳〜65歳までの国民年金基金の年金額は、
{200円×(1—30% ※)+1円}×120ヶ月=17,000円(100円未満切上)
※:日本年金機構「老齢基礎年金の繰上げ支給」
65歳以降の年金額は、
200,000円—(200円×30%×120ヶ月)=192,800円
となります。
加入者が亡くなった場合は遺族一時金を支給!
国民年金基金の加入者が亡くなった場合、遺族に対して一時金が支給されます。この遺族一時金は、全額非課税扱いとなっているので、受け取った遺族には税金がかかりません(参照元:国税庁)。
死亡のタイミングと支給額は以下の通り。
死亡のタイミング | 支給額 |
---|---|
年金受給前 | 加入時年齢・死亡時年齢・死亡時までの掛金納付期間に応じた額 |
保証期間中 | 残りの保証期間の年金原資相当額 |
一例として、35歳の方が終身年金A型に1口加入していた場合の遺族一時金は、以下の通りです。
(参照元:パンフレットP23 Q&A12)
参考:終身年金B型のみに加入している方が年金を受給する前に死亡した場合、遺族に支払われる一時金は1万円です。
なお、遺族一時金が貰えるのは、死亡時に加入者と生計が同じだった以下の順位の遺族1名のみです。
- 1:配偶者
- 2:子
- 3:父母
- 4:孫
- 5:祖父母
- 6:兄弟姉妹
国民年金基金の掛金は全額「社会保険料控除」の対象!どれくらい節税になる?
国民年金基金の掛金額は、全額が支払った年の所得控除(社会保険料控除)となります(参照元:国税庁)。
では、国民年金基金に加入して掛金を支払う事でどれくらいの節税が可能なのでしょうか、掛金毎の節税額(概算)を見てみましょう。
まず、個人の所得毎の負担税率は以下の通り。
課税所得金額 | 所得税及び復興特別所得税 | 住民税 | 合計負担税率 |
---|---|---|---|
195万円以下 | 5.105% | 10% | 15.105% |
330万円以下 | 10.210% | 10% | 20.210% |
695万円以下 | 20.420% | 10% | 30.420% |
900万円以下 | 23.483% | 10% | 33.483% |
1,800万円以下 | 33.693% | 10% | 43.693% |
4,000万円以下 | 40.840% | 10% | 50.840% |
4,000万円超 | 45.945% | 10% | 55.945% |
次に、上の表を基に掛金毎の節税額は以下の通り(便宜上1円単位まで記載していますが、納付税額は100円未満切捨となります)。
合計負担税率 | 掛金月額1万円 (年12万円) | 掛金月額3万円 (年36万年) | 掛金月額5万円 (年60万円) | 掛金月額6万8千円 (年81.6万円) |
---|---|---|---|---|
15.105% | 18,126 | 54,378 | 90,630 | 123,257 |
20.210% | 24,252 | 72,756 | 121,260 | 164,914 |
30.420% | 36,504 | 109,512 | 182,520 | 248,227 |
33.483% | 40,180 | 120,539 | 200,898 | 273,221 |
43.693% | 52,432 | 157,295 | 262,158 | 356,535 |
50.840% | 61,008 | 183,024 | 305,040 | 414,854 |
55.945% | 67,134 | 201,402 | 335,670 | 456,511 |
最低税率の人が毎月1万円掛金を支払うと年間2万円弱、最高税率の人が掛金上限額を支払うと実に約45万円もの節税が可能という事ですね。
国民年金基金で受け取る年金は、公的年金等の雑所得として優遇が受けられる!
上述した様に、国民年金基金は掛金を支払った際に全額所得控除となり節税が可能です。
但し、国民年金基金の節税メリットはそれだけではありません。将来、年金を受け取る際にも税制上の優遇がされているのです。
国民年金基金は、公的年金である国民年金の上乗せ部分なので、性質は国民年金と同様となります。
従って、国民年金基金で受け取る年金についても税金上は公的年金として扱われるので、雑所得の計算時に「公的年金等控除」が適用される事になります。
公的年金等の雑所得の計算式は以下の通り(所得金額=収入合計金額×割合—控除額)。
【受給者が65歳未満】
収入合計金額 | 割合 | 控除額 |
---|---|---|
700,001円〜1,299,999円 | 100% | 700,000円 |
1,300,000円〜4,099,999円 | 75% | 375,000円 |
4,100,000円〜7,699,999円 | 85% | 785,000円 |
7,700,000円〜 | 95% | 1,555,000円 |
収入合計金額 | 割合 | 控除額 |
---|---|---|
1,200,001円〜3,299,999円 | 100% | 1,200,000円 |
3,300,000円〜4,099,999円 | 75% | 375,000円 |
4,100,000円〜7,699,999円 | 85% | 785,000円 |
7,700,000円〜 | 95% | 1,555,000円 |
例えば、63歳の方が国民年金基金から年間150万円の年金を受け取った場合、雑所得の金額は75万円(=150万円×75%—37.5万円)となります。
注:他に公的年金等を受け取っている場合は、それぞれの金額の合計額に対して割合を掛けて所得の計算をします。
国民年金基金の安全性は?危ないという噂はホント!?
「国民年金基金は財政状況が悪く危険だ!」という噂をよく耳にしますが、これは本当なのでしょうか?
確かに、国民年金基金は純資産額よりも将来年金として給付する為に必要な額(責任準備金)の方が多い状況が続いており、積立金不足となっています。
しかし、国民年金基金にはそもそも解約という概念が無いので掛金の返還には制限が有ります。従って、運用状況が悪化したからといっていきなり破綻する事は無いのです。
運用状況に関するニュースを見ると不安に思う方もいるかもしれませんが、そこまで心配する必要は無いでしょう。
⇒国民年金基金の運用体制と運用状況 – 財政状況が危ない!の噂は本当か?
FXトレーダーの場合は加入した方が良い?
このサイトはFXトレーダー向けということで、一応FXトレーダーは国民年金基金に加入すべきかという点について考えてみましょう。
まず、会社員が副業でFXをしているという場合は、国民年金の第2号被保険者となるのでそもそも加入資格がありません。また、FX法人を立ち上げた方も国民年金の第2号被保険者となるので、国民年金基金に加入出来ません。
従って、そもそも加入出来るのはFX専業トレーダーですね(アフィリエイト等の個人事業をしている方がFXもする、というケースも有り得ます)。
FX専業トレーダーについては、可能な限り取引証拠金を用意したいでしょうから、毎月の掛金支払い額は正直負担となるでしょうね。
従って、毎年安定して利益を確定し続けられていて、老後の資金も十分に確保出来る自信が有る方は敢えて加入する必要はないでしょう。
逆に、そこまでの自信がなく老後に不安が有る場合は、少しずつでも良いので加入しておいた方が良いでしょうね。
まとめ
節税しながら老後の資金を貯める事の出来る国民年金基金について、制度の概要や節税額などを見て来ました。
掛金支払い額は全額その年の所得控除(社会保険料控除)となるだけでなく、年金受給時は公的年金等の雑所得として税金の優遇が受けられるので、メリットが多くとても魅力的ですよね。
他にも似た様な制度として小規模企業共済やiDeCo(個人型確定拠出年金)も有るので、それぞれの制度の違いを理解した上で加入を検討すると良いでしょう。